自作小説
「その名はポチ! 」 (第20回)
その名はポチ! (第20回)
「ひぇえ~ぇー」
さっちゃんは、なんとも異様な叫び声をあげた。
愛ちゃんの憤怒の表情は、迫力充分で、さっちゃんは、闇夜にお化けに出逢ったように、目を吊り上げて、怯えたのである。
さっちゃんは、怯えた後、
「そんなに怒らなくても……」
と、言って、しょげた。
「怒られて当然よ。愛ちゃんは、そっとしてもらいたいのよ。それなのに、山崎さんは事を大袈裟にして、騒ぎすぎます」
涼子先生が言った。
「さっちゃん、いつも、そうなんだ。いつもいい気になって」
大くんが、追い討ちをかける。
「いい気になんて、なっていないわよ」
さっちゃんが、弱弱しく言うと、
「いいえ、さちはいい気になっています」
と、愛ちゃんが、さっちゃんを断罪するのであった。
「いい気になんて、なっていないってばあ~ 」
さっちゃん、意地を張り、自分の非を認めようとはせずに、いいわけをしている。いいわけしたって、事態は好転しないのに……。
「山崎さん。水戸さんに謝りなさい」
涼子先生が言った。
「なんで、謝らなくちゃあならないのよ~う」
「謝らなくちゃあいけないでしょう」
「そうだ、ねえちゃんに謝りな」
大くんが、生意気にも高飛車な口ぶりで言った。
「ううっ……。みんなして、責めて」
さっちゃんは、目頭を押さえた。えっ、目頭を押さえた?
おいおい、みんな忘れているぞ!
さっちゃんには、もう一つの呼び名があることを。
「さち、聞いているの!」
愛ちゃんが、またまた、さっちゃんに詰め寄った。
さっちゃんの瞳から、一筋の涙が流れる。
《やばい………》
ポチとラッキーは身を伏せた。
《大変なことが起きるわ》
ラッキーがこれから起こることを予測して、辺りを見わたした。
《怪我人がでなければいいのに……》
ポチは耳を立てた。
「ウワアアア―ン!! ウワワワァ―ン! ウワワァーンン!!」
さっちゃんが泣き出した。物凄い大音量である。130デジベルは出ているだろうか。ちなみに、120デジベルが飛行機のエンジン音だとすれば、かなり、大きな泣き声である。いや、泣き声というレベルではない。これはもう凶器である。
案の定……。
「どうした? 何があった。車が家の中に突っ込んだのか」と、言って、慌ててラーメン屋の親父がフライパン片手に店の中から出てきたし、魚屋からは、赤ちゃんを抱えた若い嫁さんが、「どうすんのよ~ 赤ちゃん、泣き出したじゃあない」と、言って、くるくると回って出てきた。上を見れば、空を飛んでいたカラスのカーコウが電信柱に、ぶつかって、墜落するし、下を見れば、ごみ箱を漁っていた、猫のにゃん太が、ひきつけを起こして、泡を吹いて倒れてしまっている。浪人中の受験生が「地震だ。火事だ。天災だーあ」と、言って、自宅の二階の窓から飛び出して、大騒ぎしているが、この浪人生は、日頃から、ちょいとおかしいので、これはご愛嬌だろう。
外に出てきた人たちは、一体、何が起こったんだと言って、辺りを「キョロキョロ」見わたしていた。
愛ちゃんと大くんは、耳を押さえてその場にうずくまり、涼子先生は口をあんぐり開けて、しりもちをついている。
さっちゃんは………。
さっちゃんは、何もしなかったような顔をして立っていた。
「わ、忘れていたわ……。さちを、泣かすと、とんでもない目に遭うことを……」
愛ちゃんが、身体をぶるぶる震わせて、言った。
さっちゃんには、「うっかり八兵衛」というあだ名の他に、〔泣くと怖いぞ超音波女〕というあだ名があった。
「ななな、何、いまの? なにがあったの? 」
初めて、さっちゃんの泣き声を聞いた涼子先生は、いまだに何が起こったのかわからないでいた。
「な、な、何があったの? 水戸さん、一体何があったの」
涼子先生は、愛ちゃんに尋ねる。
愛ちゃんは、どう説明すればいいのか分からない。いまのは、さちの泣き声よと、言ったところで信じてもらえるのだろうか。
「ひっひひひっひつ」
さっちゃんは、笑い出した。
おいおい、なに笑ってんだよ、さっちゃん、きみのせいだろう。
ポチは、やれやれと右足で頬を撫でるのだった。
=続く=
「ひぇえ~ぇー」
さっちゃんは、なんとも異様な叫び声をあげた。
愛ちゃんの憤怒の表情は、迫力充分で、さっちゃんは、闇夜にお化けに出逢ったように、目を吊り上げて、怯えたのである。
さっちゃんは、怯えた後、
「そんなに怒らなくても……」
と、言って、しょげた。
「怒られて当然よ。愛ちゃんは、そっとしてもらいたいのよ。それなのに、山崎さんは事を大袈裟にして、騒ぎすぎます」
涼子先生が言った。
「さっちゃん、いつも、そうなんだ。いつもいい気になって」
大くんが、追い討ちをかける。
「いい気になんて、なっていないわよ」
さっちゃんが、弱弱しく言うと、
「いいえ、さちはいい気になっています」
と、愛ちゃんが、さっちゃんを断罪するのであった。
「いい気になんて、なっていないってばあ~ 」
さっちゃん、意地を張り、自分の非を認めようとはせずに、いいわけをしている。いいわけしたって、事態は好転しないのに……。
「山崎さん。水戸さんに謝りなさい」
涼子先生が言った。
「なんで、謝らなくちゃあならないのよ~う」
「謝らなくちゃあいけないでしょう」
「そうだ、ねえちゃんに謝りな」
大くんが、生意気にも高飛車な口ぶりで言った。
「ううっ……。みんなして、責めて」
さっちゃんは、目頭を押さえた。えっ、目頭を押さえた?
おいおい、みんな忘れているぞ!
さっちゃんには、もう一つの呼び名があることを。
「さち、聞いているの!」
愛ちゃんが、またまた、さっちゃんに詰め寄った。
さっちゃんの瞳から、一筋の涙が流れる。
《やばい………》
ポチとラッキーは身を伏せた。
《大変なことが起きるわ》
ラッキーがこれから起こることを予測して、辺りを見わたした。
《怪我人がでなければいいのに……》
ポチは耳を立てた。
「ウワアアア―ン!! ウワワワァ―ン! ウワワァーンン!!」
さっちゃんが泣き出した。物凄い大音量である。130デジベルは出ているだろうか。ちなみに、120デジベルが飛行機のエンジン音だとすれば、かなり、大きな泣き声である。いや、泣き声というレベルではない。これはもう凶器である。
案の定……。
「どうした? 何があった。車が家の中に突っ込んだのか」と、言って、慌ててラーメン屋の親父がフライパン片手に店の中から出てきたし、魚屋からは、赤ちゃんを抱えた若い嫁さんが、「どうすんのよ~ 赤ちゃん、泣き出したじゃあない」と、言って、くるくると回って出てきた。上を見れば、空を飛んでいたカラスのカーコウが電信柱に、ぶつかって、墜落するし、下を見れば、ごみ箱を漁っていた、猫のにゃん太が、ひきつけを起こして、泡を吹いて倒れてしまっている。浪人中の受験生が「地震だ。火事だ。天災だーあ」と、言って、自宅の二階の窓から飛び出して、大騒ぎしているが、この浪人生は、日頃から、ちょいとおかしいので、これはご愛嬌だろう。
外に出てきた人たちは、一体、何が起こったんだと言って、辺りを「キョロキョロ」見わたしていた。
愛ちゃんと大くんは、耳を押さえてその場にうずくまり、涼子先生は口をあんぐり開けて、しりもちをついている。
さっちゃんは………。
さっちゃんは、何もしなかったような顔をして立っていた。
「わ、忘れていたわ……。さちを、泣かすと、とんでもない目に遭うことを……」
愛ちゃんが、身体をぶるぶる震わせて、言った。
さっちゃんには、「うっかり八兵衛」というあだ名の他に、〔泣くと怖いぞ超音波女〕というあだ名があった。
「ななな、何、いまの? なにがあったの? 」
初めて、さっちゃんの泣き声を聞いた涼子先生は、いまだに何が起こったのかわからないでいた。
「な、な、何があったの? 水戸さん、一体何があったの」
涼子先生は、愛ちゃんに尋ねる。
愛ちゃんは、どう説明すればいいのか分からない。いまのは、さちの泣き声よと、言ったところで信じてもらえるのだろうか。
「ひっひひひっひつ」
さっちゃんは、笑い出した。
おいおい、なに笑ってんだよ、さっちゃん、きみのせいだろう。
ポチは、やれやれと右足で頬を撫でるのだった。
=続く=
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