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三文クリエイター

自作小説&映画の感想、地域の話題を紹介してゆきます! 

公演、二週間前! 

市民劇場 裏話

   第37回 釜石市民劇場 天明飢餓事変
         「栗林村 タエの物語」の稽古風景


  本番は、2月23日、本日公演二週間前、青葉ビルやテットで、市民劇場の
  熱い稽古が行われていた。
  各出演者は、セリフを覚え、場のシチエーションの確認と、動きの確認に
  余念がない。

  演出の指示を受け、自分たちで動きを考え、お互いチェックし、
  よりよい動きや、セリフ回しを試行錯誤して稽古をしている。

  仕事の関係上、また、学業の都合で、全員が稽古に参加できた日は、
  まだ、一度もないが、必ず大きな大輪を咲かせてくれると
  信じている。

  当日、小生は音響を担当するので、当日、傍らにいることはできないが、
  公演は、必ず、成功すると思う。
 (ただ、お客さんの入りが心配…。あまりチケットがさばけていないみたい)

タエの稽古 1

               【稽古に励むキャストたち】

  決戦の日は、2月23日 必ず、成功させようね!!

 タエの入場券 5

  チケットである。前売り 大人1000円 子供500円
  市内のプレイ・ガイド、桑畑書店 などで発売中!
  問い合わせは、釜石市民劇場実行委員会まで。
 
 *次回 スタップの懸命な作業風景を届けます。



 
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愚痴る!? 19 

自作小説

    愚痴る!? 警備員宗一郎 殺人事件に巻き込まれる

                      19、

 明美さんは、幸ちゃんの葬儀の時、激しく慟哭していた。
 愛する人や、親しくしていた人間が亡くなれば、悲しみに打ちひしがれてしまうのは当然のことだと思う。が、明美さんのそれは、あまりにも際立っていた。お坊さんの読経が始まると、獣のように泣き叫び、全身を震わせて、大粒の涙を流し、何度も、「幸ちゃん、ごめんなさい。幸ちゃん、ごめんなさい。本当に、ごめんなさい」と、言い続けていたのだ。あまりにも凄まじいので、葬儀に同席していた佐藤さんと、相沢さんが、二人で、泣き叫ぶ明美さんを、葬儀会場の外に連れ立った。
 たとえようもない悲哀や絶望は、人に生きる希望を失わせるほどに、心を傷付けるというが、これほど激しいものなのだろうか?
 肉親や友人が何かの理由で、目の前から、いきなり消えてしまったら、誰しも、深い悲しみに襲われ、喪失感を味わい、うろたえるだろう。それが、人の感情であり、人が人としての、あるべき姿なのだが、明美さんの、この感情はなんなのだろう。親愛なる人を失った悲しみとは別に、自分の犯した過ちを責めているような、痛烈な感情が明美さんから発せられていたのだ。
思えば、西田の葬儀での明美さんの様子も、おかしかった。
 焼香の時、ふらりと立ち上がった明美さんは、どこか、おどおどしていた。葬儀会場を、ゆっくりと見渡し、長いため息をついて茶色の線香を右手でつかむと、下の床に落としてしまった。かがみ込んで、茶色の線香を拾おうとしたが、そのまま、床に両膝をつき、しばらく、そこから動こうとはしなかった。やがて様子が、おかしいことに気付いた若い寺の二人のお坊さんに抱えられて、立ち上がったが、あの時、明美さんは、何を思っていたのだろうか?
 明美さんと、昔から交流があった幸子ほどではないが、西田も、また、明美さんにかわいがれていた。ジョークを飛ばし、じゃれ合う、西田と明美さんの姿は、大手警備会社K支店において、一つの清涼剤ともいえた。
(明美さんに、とって、西田はどういう存在だったのだろう)
 流 幸子の葬儀が終わった後、そんなことを考えながら、宗一郎が、駐車場に行くと、明美さんと、偶然、出会った。
 明美さんは、泣き疲れたようで、足下をフラフラさせながら、歩いていた。
「明美さん、大丈夫ですか」
 宗一郎が、声のトーンを下げて、気遣った。明美さんは、宗一郎のことを、ぼんやりと見ていたが、やがて、おもむろに話し始めた。
「十全さん……。あなた、幾ちゃんから、幸ちゃんの遺品、もらったんでしょう?」
 宗一郎は、受付で、来場者名簿に自分の名前を記入するとき、幾代から紙袋を手渡されていた。中身を幾代に問うと、幸ちやんが生前、愛読していたミステリー小説の文庫本だという。
 幾代は、紙袋から文庫本を取り出して、言った。
「この本、幸子が大事にしていた本……。十全さん、もらってくれますか?」
 本は、江戸川乱歩の本だった。
「あの子、子供の頃から探偵小説が好きで……。十全さんも好きなんでしょう。いつか明智小五郎みたいな探偵が出てくる小説を書きたいと言っていたじゃあない」
 宗一郎と乱歩との出会いは、宗一郎が中学一年生の時だった。明智小五郎と少年探偵団の活躍に、心を躍らせた。あれから、そうとう年月が流れているが、乱歩の小説と出会った時の衝撃は、忘れたことが無かった。
「よく、オレが乱歩が好きだったことを覚えていたな」
 宗一郎が言う。
「日曜日に十全さんの家に遊びに行ったとき、帰り際に、言ったでしょう。オレ、乱歩が好きなんだ。それで作家を目指していたけれど、いまじゃあ、このざまだって言って、笑ったじゃあない」
 確かに、そう言ったのを覚えている。
「幸子も、乱歩が好きなの。だから……」
 幾代は、そう言って、涙ぐんでしまった。
 幸子の葬儀が始まる前に、幾代と交わした幸子の思い出。明美さんは、どこかで、あの光景を見ていたのに違いがない。明美さんは、何を思ったのだろう。
「いいわね、十全さんは……。みんなから慕われていて……。西田くんの遺品も、もらってあるんでしょう」
 明美さんが言う。
「訊いているわよ。西田くんの母さんと、妹が、わざわざ十全さんの家に来て、渡したっていうじゃあない。あんただけ、いいわね、若い人から慕われて」
 明美さんは、恨めしいそうな瞳で、宗一郎をねめつけた。
 暖かい光を宿した人の瞳じゃあない。どちらかと言えば、爬虫類の冷たい闇の光をともした瞳だ。
(な、な、なんなんだ)
 宗一郎は、不覚にも取り乱してしまった。
 ここにいる明美さんは、いつも冗談や軽口で、辺りを和ませている明美さんでは無かった。別人ではないが、明美さんの殻を被ったまがいものにも見えた。表面を覆っている肉の殻を剥ぐと、蛇に似たものが、そこにいるのではと、思ってしまった。
 明美さんに、何が起こったのだろう。葬儀中に取り乱し、会場から連れ去られてしまった明美さん。葬儀会場の駐車場で、宗一郎に絡んできた明美さん。大手警備会社K支店で、張り切って、仕事の手配をしていた明美さんの姿は、そこにはない。
 宗一郎は、普段、決して見ることがない明美さんの姿を、そこに見ていた。
 その明美さんから、喫茶「若葉」にいる宗一郎の元に電話があった。
 日曜日の、この時間帯に大手警備会社K支店に話があるから来てくれと言うのだった。
 宗一郎は、緑色のジャンパーから携帯電話を取りだし、時刻を確認した。
 午後七時半……。
 この時間に、会社に来てくれということは、よほどのことだろう。
 西田と幸子のことについてと言うことだから、二人の事故、あるいは事件について何かを話したいのだろう。
 宗一郎は、喫茶「若葉」の駐車場に駐めてあった軽自動車に、乗り込み、大手警備会社K支店までの道のりを急いだ。


                   = その20に続く =

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愚痴る!? 18 

自作小説

   愚痴る!? 警備員宗一郎 殺人事件に巻き込まれる

                      18

「この店、よく、来るの?」
 こんな店によくくるわね~えと、言いたげに、けだるそうに言う。
「この店、コーヒーは、それなりにうまいけれども、サービスがいまいち」
 洋子さんは、マスターをジロリと見た。
「よく、言うよ。このまえも、ただで、コーヒーを飲んだくせに」
 と、マスターが言って返す。
「えっ! 喫茶店に来て、コーヒーをただで飲んだんですか?」
 宗一郎は、片手に持っていたコーヒーカップを、落としそうになった。
 他の喫茶店では、友人や知人に、ただで、コーヒーぐらい、ごちそうするときもあるらしいが、「若葉」のマスターは、そういうことは一切しない。きちんと仕事と遊びの区別を、つけている。宗一郎さえ、ただで、コーヒーをごちそうされたことはないのだ。
 繰り返して言うが、喫茶・軽食「若葉」のマスターは、宗一郎とは同級生で、言わなくても言いたいことが、お互いに分かっている、いわゆるツーカーの仲である。若いときはよく飲みに行ったり、酔っ払ってバカな真似をして、ブタ箱で、共に一夜を過ごしたり、腹が空いてどうしようもないときは、金に余裕があるほうが、お金を出して、飯を食べて、バカ話をした仲なのである。
 莫逆の友。と、言ったら、ちと大げさだが、その莫逆の友にさえ、マスターは、ここ「若葉」では、そういうサービスをしない。それなのに、洋子さんだけに、コーヒーを無料で飲ませたなんて……。
「パチンコ、負けただろう」
 マスターが、洋子さんに聞く。
「パチンコなんか、やんないわよ」
「嘘をつけ。 パチンコ屋に通っているという噂だぞ」
「パチンコ屋に通っているわけじゃあなくて……見回りをしているのよ。ギャラガの店内を」
「まだ、旦那さん、ギャラガでパチンコをやっているのか?」
 洋子さんの旦那が、ギャンブル好きということは、マスターも知っているらしい。洋子さんが、ギャラガの見回りを、する理由は、旦那さんに、パチンコをやらせないためなのだ。
「あのバカ。今度、パチンコやったらギタギタにしてやるわ」
 洋子さんが、そう言うと、
「また、パチンコ台に頭を、ぶちつけるのかい?」
 マスターが、呆れたように、顔をしかめた。洋子さんは、洋子さんで鼻息荒く、拳を握りしめている。洋子さんの旦那が、もし、洋子さんの目の前で、パチンコをやったら、殺されそうな気配だ。
(こんなに激しい性格だったのか……)
 宗一郎は、欲求不満の塊のような洋子さんの態度に、少し、驚いた。
 大手警備会社K支店にいる時の洋子さんは、どちらかというと、控えめな性格に見えた。事務員の明美さんと、いつ終わるかも分からない果てしないおしゃべりをして、憂さを晴らしているようだったが、夫の頭をつかんで、パチンコ台に打ち付けるようなキツイ性格だとは、思ってもいなかったのである。それが、ここではこだ。鬼のような形相を見せて、口から火を吐くような勢いで、憤慨しているのだ。
「昨日、刑事が来たけれど……おまえ、何かやったのかい?」
 マスターが、洋子さんに訊く。
「ここに、来たの? しつこいのね、L市の警察って」
「いいや、ここに来たのは、L市の警察じゃあない。自分たちは県警の警察だがと、言っていたぞ」
「県警の刑事が、なぜ、ここに来て、私のことを聞くのよ?」
 洋子さんは、目を大きく見開いた。
 L市での北野ダイカスト爆発事故の時、現場にいた大手警備会社K支店の従業員は、洋子さんと、幸ちゃんだけだ。幸ちゃんは爆発事故に巻き込まれて亡くなったが、洋子さんは、かすり傷程度で済んだ。なぜ、同じ現場で、同じような仕事をした二人が、一方が死亡し、もう一方が、かすり傷程度で済んだのか、洋子さんは、その時の状況を、L市の警察に、執拗に訊かれたらしい。
「大方、事故のことを訊きに来たんでしょう。事故のことなら、L市の警察に、キチンと話したのに……」
 洋子さんは、額を左手で、ボリボリ掻いた。
「いや、L市で起きた爆発事故のことじゃあなくて……」
 と、マスターが、言う。
 宗一郎の携帯電話が鳴った。
「はい、十全ですが?」
 携帯電話から、明美さんの声が聞えてきた。
「えっ! 今からですか?」
 宗一郎が眉を寄せる。
「大事な話なんですか?」
 明美さんは、日曜日の、この時間帯に、大手警備会社K支店に来てくださいと言っていた。普段の日曜日は、会社は休みだ。明美さんは、休みなのに出勤しているらしい。
「誰だ? 誰からの電話なんだ」
 マスターが訊く。
 電話口での明美さんの話によると、亡くなった西田と幸ちゃんのことで、宗一郎に話したいことがあるらしい。日曜日の、この時間帯に大手警備会社K支店に呼び出すとは、よほど大事な話なのだろう。宗一郎は、用心して、マスターの問いには応えず、マスターに飯代を払って、喫茶「若葉」を後にしたのだった。


                    = その19に続く =




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市民劇場 「タエの物語」 チラシ & ポスター 

市民劇場 裏話

    第37回 釜石市民劇場 
  「栗林村 タエの物語」 チラシ& ポスター


   先日、舞台の稽古を見に行ったら、ポスターとチラシができていた。
   聞いて見ると、12月中にできていたらしい。
   「ええっ!」と、驚いたが、もうすでに、市内の主なプレイガイドに
   配られていた。
   ためしに、いつも稽古場になっている「青葉ビル」の室内を
   観てみると、ちゃんと張られてあった。
   (あまり、めだたない場所だったので、ちと、残念!)

   公演は、2024、2,23(祝日) 前売り券は、釜石市民ホール、
   市内各応援センター、桑畑書店 他 で発売中です。

   よろしく、お願いします。ぜひ、見に来てください!!

  タエのチラシ 1


  

 

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愚痴る!? 17 

自作小説

    愚痴る!? 警備員宗一郎 殺人事件に巻き込まれる

                          17、

 喫茶・軽食「若葉」は、宗一郎が住んでいる中南町の隣、林町にあった。宗一郎の同級生が経営している店で、宗一郎は、同級生のよしみで、時々、ここに訪れては、とりとめもない話をして、飯を食べている。
 今日も、腹が減ったので、夕飯を食べに来ていた。
 独身の気楽さか、気が進まないとき、ここ「若葉」に来て、晩ご飯をいただく。晩ご飯ぐらい、自分で作って食べろよと、マスターに、冗談半分で、からかわれるが、一人で家にいても、話し相手もいないし、テレビを見ても、面白いテレビ番組などやってはいない。かといって読書する気にもなれない時がある。そんな気分で、だらけている時は、「若葉」に足を向けるのだった。
「落ち着いたのか?」
 深緑のドロップ型カウンターチェアの上に座っている宗一郎に、この店のマスターが、声をかけた。
「やっと、落ち着いたかな……。幾ちゃんも、明日から来ると言うし……」
 左頬に手のひらを当て、首を曲げて、宗一郎が、安心したように言う。
「幾ちゃん!? 幾ちゃんって、亡くなった幸子さんの姉さんだろう。明日から、働くっていうのか?」
「妹さんが、亡くなったんだ。まだ早い、もっと、休んでいた方がいいのにと言ったのに、働いていていた方が、気が紛れるって言うんだ」
「気が紛れるって……。妹の幸子さんは、警備の仕事の最中に亡くなったんだろう。それなのに、また、警備の仕事をやるのか」
「ああっ……」
 宗一郎は、昨日の葬儀の様子を頭に浮かべた。言うまでも無いと思うが、幸子の死に、両親は夜に漂うカゲロウのような状態で、意気消沈していた。姉である幾代は床に伏せっていて、葬儀には参加できなかったらしい。耐えがたい悲痛が、彼女を打ちのめしていたと思うのだが、その幾代が明日から働くという。そうとう無理しているのだろう。
 宗一郎は、明日は、なるべく幾代の顔を見ないようにと、心に思った。
「おっ、洋子だ」
 マスターが、ウインドウ越しに、表を歩く洋子さんを、見つけた。
「えっ、洋子さん?」
 宗一郎は、振り返った。見てみると、市道を挟んだ歩道上を歩いている洋子さんの姿が見えた。赤いハンドバッグを小脇に抱え、けだるそうに歩いていた。
「大方、パチンコでもやって、負けたんだろうが」
 マスターが、皮肉に笑う。
「あの人、パチンコやるの?」
 宗一郎が、聞いた。
「ギャラガの洋子っていえば、この辺じゃあ有名なパチンカーよ」
「ギャラガの洋子ね……」
 ギャラガというのは、K市で一番大きなパチンコ店である。K市には、三つのパチンコ店がある。五年前までは、五つのパチンコ店があったのだが、人口減とともに二つのパチンコ店が潰れ、大きなパチンコ店だけが残った。ギャラガは、その残ったパチンコ店では最大級のパチンコ店で、客入りも多い。
「ギャラガの洋子って、まるで、ギャラガの主みたいじゃあないか」
 宗一郎が聞く。
「主、みたいなものさ」
 マスターが応えた。
 夫がギャンブル狂で、そのために苦しんでいるはずの洋子さんが、実はパチンカーであるということ自体、信じがたいが、ギャラガの主とさえ、言われているとは知らなかった。本当かどうか、知る由もない。が、気心が知れた「若葉」のマスターが言う話なら、本当のことなのだろう。なぜ、主と呼ばれているか? その問いは、とりあえず置いておいて……。..
「旦那さん、仕事、見つかったの? なんにもしないで、ブラブラしていると聞いたが?」
 と、宗一郎は、聞いて見た。
「旦那か……。いまも、ブラブラしているという話だ」
 マスターの話によると、洋子さんの旦那は、ほぼ毎日、パチンコ店「ギャラが」に来店していた。定職もない身で、パチンコなどやっている身分じゃあないと思うが、パチンコだけは止められないらしい。
「家に置いていた、わずかなお金をつかってパチンコをするから、洋子のやつ、とうとうキレてしまって、ギャラガの中で大喧嘩」
 と、マスターが、あきれかえったように言った。・
「店内でか?」
 宗一郎が、眉をしかめる。
「ああっ、止めに入った店長を、押し倒す、パチンコ台のガラスを叩き壊すの大騒ぎ」
 「ギャラガ」の店内で、パチンコをしていた四十過ぎのくたびれた男が、突然、背後からどつかれる事件があった。男をどついた女は、男の頭を両手でつかみ、パチンコ台に頭を打ち付けた。騒ぎを聞きつけた店員が止めに入ると、悪態をつき、おっとり刀でやってきた店長を、どつき倒したらしい。
「警察は? 警察が呼ばれたんだろう?」
 宗一郎が聞く。
「いやいや、そんなことをしたら、やれ現場検証やなんやかんやで、店を一時的に閉めなくちゃあいけなくなるだろう。店は満員の客で、あふれかえっていたんだぜ。そんなことできるわけないさ」
「すると……。別室に連れて行かれて……」
 言うまでも無いと思うが、パチンコ店には、店員が休む休息所がある。ギャラガの場合、出玉と景品を取り替えるカウンターの中に、その出入り口があり、その休息所に洋子さんが、連れて行かれて、懇々と説教を食らったらしい。
「連れて行かれて、説教と損害賠償を請求されたというわけさ。警察には通報しないで……」
 「若葉」のマスターは、その場にいたかのように言った。
「損害賠償って言ったって、洋子さんには、お金がないだろう」
「ない、全然ない」
「じゃあ、賠償できないわけだな。それなのに、なぜ、警察にも通報されないで許されたわけ?」
「ギャラガの店長はな、洋子の兄貴なんだ。身内っていうことで許されたんだろう」
「えっ! 洋子さんの兄貴って、ギャラガの店長なんだ」
 市内で一番大きいパチンコ屋の店長ならば、それなりの給料を、もらっているはずだし、オーナーにも顔が利くはずだ。洋子さんが出した損害は、兄であるギャラガの店長が、立て替えたのだろう。
 透き通るような綺麗な鐘の響きを鳴らして、軽食・喫茶「若葉」の、木目調のドアを開けて、客が店の中に入ってきた。
「この店、ドアベルの音だけは、爽やかなんだから。マスターは、いまいちだけれども……」
 そう、悪態をついて「若葉」の店内に入ってきたのは、洋子さんだった。洋子さんは、店に入るなり、つかつかと歩いて、一番奥の窓際のボックス席に座った。
「コーヒー」
 つっけんどんに注文をする。
「コーヒーだけでいいのか?」
 マスターが聞く。
「ただで食べさせてくれるなら、スパゲッティでも、もらおうかね。大盛りで二皿」
 喫茶店にきて、ただで食べさせろとはどういう神経をしているのだろうと、宗一郎が眉間にしわを寄せると、
「冗談よ。このごろ太ってきてさ。身体が硬いのよ。だから、今日はコーヒーだけでいい」
 コーヒーを飲むと、痩せて、身体が柔らかくなるとでもいうのだろうか? 洋子さんは、大きなあくびをして、こちらを向いた。
「ん!? 十全さん……。十全さんじゃないの。奇遇だわね。こんなところで会うなんて」
 洋子さんは、カウンターに座っている宗一郎に、声をかけた。

              = その18に続く =

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プロフィール

本も大好きですが、いい大人なのにももクロを今宵なく愛しています。

パワーミツオン

Author:パワーミツオン
FC2ブログへようこそ!
市民劇場の脚本を書いたり、本を出版したり(にゃんにゃんニャンタの大冒険!)、ブログで小説やら、街の紹介を行っている、とりとめもない男です! 

故郷を愛していますー。よろしく

ナイスな本!

古今東西、感銘を受けた小説を紹介して行きます。(不定期)

       

「竜馬がゆく」司馬遼太郎・著 本好きの人間なら、一度は読んでおきたい誰もが絶賛する名作である。小生も、高校の時に、この本で出会い、もう七回も読み込んでいる。が、なぜか、飽きない。江戸末期の人間たちが、生き生きと描かれており、読めば読むほど味が出てくるのである。日本男児なら神棚にあげておきたい名作である。

 エキサイティングな本!

謎解きの面白さ、ストーリーの奇抜さに興奮した一冊である!

「千年王国のしらべ」 世界の奇跡を調査する、『奇跡調査官』シリーズの一冊。 この千年王国のしらべは、最後の最後まで謎が満ち溢れている、シリーズ屈指の名作である。

続・エキサイテイングな本!

巧みなストーリー構成と、凝った演出で魅せる本を紹介します!

「クリムゾンの迷宮」 ご存じ、破竹の大活躍をしている貴志祐介氏の珠玉の一冊である。貴志氏の作品は、どれも素晴らしいものばかりだが、その中の一冊と言われたら、迷わず、この本を差し出すだろう。

  感動した本!

読んでゆくうちに、感動して涙を流してしまった本を紹介します!

「夢をかなえる象」 この本は自己啓発の本なのだが、ちまたにあふれている独善的な啓発の本ではない。神様であるガネーシャと、僕の、ユーモアたっぷりのかけあいは、最後のガネーシャの言葉「成功だけが人生やない、理想の自分をあきらめるのも人生やない。ぎょうさん笑うて、バカみたいに泣いて……」に、つながる。お別れの時のガネーシャの言葉には、不覚にも涙を流してしまった。

ナイスなミステリー

いまやミステリーの世界は、大幅にその範疇を拡げ、社会派ミステリーや青春ミステリー、ユーモアミステリーに医学ミステリー、警察内部などを告発するミステリーなど、さまざまのものが、溢れています。その中で、面白かったと思うミステリーを紹介します!

  

「パラドックス学園 ~開かれた密室」 作・鯨 統一郎 この物語はパラレルワールドをモチーフにした快作である。こちらの世界で、超がつくほど有名な作家が登場人物として次々出てくる。シャーロック・ホームズの産みの親、コナン・ドイル、アルセール・ルパンの作者、モーリス・ルブラン、名探偵ポアロを世に送り出したアガサ・クリスティー……。それらのミステリ小説界の大御所たちが密室で起こった殺人事件を解決するために、奔走するのである。 さて……、ミステリ界の大物ジョン・ディクスン・カーを殺した犯人は? 犯人は、まったくもって意外な人物である。パラレルワールド舞台にした小説だから、成しえたトリックなのだが、これを推理小説と言ってよいものだろうか。 その判断は、読んだ人に任せるしかない。

続・ナイスなミステリー

おもしろかったと思われる、エンターメントに溢れるミステリーを紹介します!

   

「アリアドネの弾丸」 海堂 尊・著 (宝島社) 海堂氏といえば、第4回『このミステリーがすごい!』大賞で、見事、大賞の栄冠を勝ち取った作家である。大賞を受賞した「チーム・バチスタの栄光」はテレビドラマや映画になり、世間から注目され、テレビも映画も本も大ヒットしたのであった。この本「アリアドネの弾丸」は、チーム・バチスタのデコボココンビ、行灯こと田口と厚生省の火喰い鳥、白鳥がまたもや出てきて大活躍する推理物である。このシリーズは「チーム・バチスタの栄光」から始まって、「ナイチンゲールの沈黙」「ジェネラル・ルージュの凱旋」、「ジェネラル・ルージュの伝説」、「イノセント・ゲリラの祝祭」そして、この「アリアドネの弾丸」で6冊目である。6冊の中でどれか一つ読めと言われたら、迷わず、この「アリアドネの弾丸」を推薦しまーす。そして、シリーズ最終作になる「ケルベロスの肖像」残念ながら、まだ未読ではあるが、期待を裏切らない、デキになっていると思う。

 人気作家の本!

ベストセラーを次々と生み出す人気作家の本を、毎月1冊の割合で、取り上げてゆきたいと思います!

 

「永遠の0」 百田尚樹・著  いま、話題になっている本である。(H26,1)文庫本で350万部という文庫本で一番売れた本でもある。おいおい、この出版不況といわれる現在、どうしてそんなに売れるんだ? と、いう疑問がふつふつと心の中に起こり、本屋に行って買ってきた。買って、直ぐ読みたかったが、この小説を原作にした映画もやっていたので、まず、映画から観てみた。一言で言って、大変良い映画であった。一緒に行った友人が「これからの人生を変えるかもしれない映画だった」と言っていたから、感動したのは、小生だけではないようである。で、原作を読んでみる。第二次大戦中、活躍した0戦という戦闘機をモチーフにした秀作である。決して読んで損はしない。一年に一度は手にして見たい小説であった。  

 ナイスなマンガ!

人を夢中にさせる本は、小説だけとは限りません。時を忘れ、無我夢中で読んだマンガ本を紹介します!

  

「仮面ライダー スピリッツ」(全16巻)原作・石ノ森章太郎、漫画・村枝賢一  原作の石ノ森章太郎版、仮面ライダーを、よく知らない世代でも、十分楽しめる作品になっている。幼い時、仮面ライダーと接した世代には、当時の格好よくて、優しいライダーがそこにいる。仮面ライダーを描いた漫画は、ちまたにあふれているが、読んでいて、涙がでるほど恰好いいライダーが、描かれている本は、この本だけだと言っても過言ではない。 「滝、今夜は俺とおまえでダブルライダーだな」 本郷が、言った第一巻の名セリフは、当時、ライダーに憧れた、すべての者たちの心に響きわたる。

続・ナイスなマンガ!!

なんか、こう疲れていても、時間を無駄にしたくないとき、無性にマンガを読みたくなる時があります。そんな、ひとときの清涼剤になってくれたマンガを紹介します!!

   

「悪魔くん千年王国」(全)ちくま文庫。著・水木しげる。NHK朝のテレビ小説「ゲゲゲの女房」でまた一段と有名になった漫画家、水木しげる氏の本である。現在、市場に出ている「悪魔くん」の名を冠したマンガ本は、水木氏が貸本屋時代に描いた「悪魔くん」、少年マガジン版「悪魔くん」、少年ジャンプに連載された、この「悪魔くん千年王国」の3つである。(コミックボンボン版、コミックBE版は除く)この「悪魔くん千円王国」は、水木氏が諸々の事情で中断した貸本屋時代の「悪魔くん」を完成させた形で描いている。(小生は、そう思うが、みなさんはどうですか?)千年王国をつくるために、家庭教師の身体を乗っ取り、自分の使徒にするやり方には、少々疑問に思うが、何度でも読み返してみたい本ではある。

 ナイスな映画!!

心に残った映画、わくわくはらはらした映画、涙を流してしまった映画を紹介してゆきます!

   

「サウンド・オブ・ミュージック」1965年公開。20世紀フォックス提供。この映画はミュージカル映画である。小生、この映画を見るまでは、ミュージカル映画に関心がなく、もっぱらSF映画やら、怪獣映画ばかり観ていた。が、あるとき偶然、地方の映画館で怪奇映画と、この映画が、2本立ててかかった。小生のお目当ては、もちろん怪奇映画であったが、いつのまにか先に上映された「サウンド・オブ・ミュージック」のとりこになってしまい、怪奇映画など、どこかにぶっ飛んでしまったのであった。(今でも同時に封切られた怪奇映画の名を思い出せないでいる)主演のジューリーアンドリュースの魅力に心が激しく波打ち、全編に流れる名曲の数々に涙腺がゆるみぱなしになり、あげくの果てには、映画館で一緒になって歌い出したのである。(心の中で……)「エーデルワイス」「ドレミの歌」「ひとりぼっちの羊飼い」みな、今も愛されている曲である。

 続・ナイスな映画!!

心に沁みる映画は、つらかったり、悲しかったりしたとき、ふと想いだすものである。感動は人に勇気や希望を与えるものだと信じてゆきたい。そんな想いを与える映画を紹介してゆきます!

「カラー・パープル」ワーナー・ブラザース映画・監督、スティーブン・スピルバーグ。スピルバーグ監督は「シンドラーのリスト」で初めて、アカデミィー賞、作品賞に選ばれたが、本作はそれに勝る人間ドラマを描いた秀作と言っても過言ではない。人種差別や男女差別を真っ向からとりあげ、人間にとって、何が一番大切なのかを、高らかに謳いあげている。ぜひ、見て欲しい名画である。

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愛しきアナログ・ゲーム その1

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愛しきアナログ・ゲーム その2

ボードゲームには、テレビゲームでは決して得ることができない楽しみがある。子供のころは、新しいボードゲームがやれたら、その日一日はバラ色に包まれたものである。

  

「モノポリー」世界大会が開催される大人気のボードゲームである。小学生のころ、このゲームをやりたいためにそろばん塾をさぼったときがあった。

愛しきアナログ・ゲーム その3

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