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自作小説

餓鬼狩り (第二十六回)

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                    餓鬼狩り   (第二十六回)

 ヌエが琥耶姫の元から立ち去った後、琥耶姫は化瑠魂なるものを追い求めて、癒師(いやしし)への道に入った。
 複雑怪奇な身体を持つ蒜壷一族たちの医師、癒師。
 癒師の心構えを鍛えるために、癒師の道に入ったものは七日間の断食を繰り返す苦行を行わなければならない。人肉を食さなければ、八日目には狂うという蒜壷。その蒜壷のものが、自らの意志で人肉を絶つのである。
 断食の苦行を終えた蒜壷は、その後、蒜壷一族だけが持つ森羅万象を見通す眼で、自然界の理(ことわり)を身に付ける修行に入る。
 ひとり、深山に籠り、夏は炎天下の岩場で座禅を組み、冬は寒空の下で滝に打たれ、わずかな食料で、万物流転の術を身につけるまで、深山を降りることは許されない。
 万物流転の術を身につけて、初めて、先達の癒師から、癒師としての医術を教えてもらえる。万物流転の術を身につけることができる蒜壷のものは、千人に一人。万物流転の術を身につけることができなかった蒜壷は、深山の洞穴の中で、ただ老いて朽ちてのみなのである。
 癒師の修行。その修業は、苦難に満ち溢れた苦闘の道程だった。
 詳細は、ここでは省くが、琥耶姫は、その苦難の道に打ち勝った。何度も挫折を繰り返しながらも、最後には癒師として旅立つことができた。
 深山を降りた琥耶姫は、先達の癒師に認められ、癒師としての医術を先達の癒師から学んだ。念願だった化瑠魂の造り方も覚えた。琥耶姫が実際に、化瑠魂を使用できるようになったのは、琥耶姫が、癒師を志して五十年目の出来事だった。
(これを、手にいれるために、何度、血の涙を流したか……)
 琥耶姫は、胸に手をやり、着物の中に忍ばせている化瑠魂を握った。
 一羽の鴉が琥耶姫の頭上を舞っている。右の眼が潰れている隻眼の鴉だ。隻眼の鴉は静かに舞い降りると、琥耶姫の傍らに立っている枯れ木に止まった。
「刻(こく)……。待ちわびたぞ」
 琥耶姫が言った。
「クヤヒメ、ナンカヨウカ?」
「ようが、あるから呼んだ」
「ナンノヨウダ。コクハイソガシイ」
 隻眼の鴉は、忙しく、一つ目をキョロキョロと動かした。
「ヒキガエルの惟三が、人間界に降り立った」
 琥耶姫が言う。
「コレゾウガ!? ナンオタメニ?」
「那美の秘密を探るためにじゃ」
「ナミノヒミツヲサグル? ナミノナニヲサグル?」
「那美の持つ、十種神宝の秘密。惟三は、それがどのようなものであるか、きっと探り出すであろう……。刻、おまえは、惟三の後をつけ、惟三のつかんだ情報を、逐一わらわに報告せよ」
「コクハ、コレゾウノツカンファヒミツヲ、クヤヒニシラセレバイイノカ?」
「そうじゃあ、おまえは、わらわに惟三が掴んだ情報をしらせればいい。人間界に降りた惟三は、人に化身しているから、おまえのその隻眼で、よくみきわめるがいい」
「ヒトニケシンデキナイ、コレゾウガ、ヒトニケシン。シタノカ?」
「そうじゃ、化瑠魂を使った」
「クヤヒハ。ァリュウコンヲ。コレゾウニワタシタノカ?」
「そうじゃ……」
「ナゼ? ナゼ、コレゾウニ、カリュウコンヲワタシツァノダ?」
「聞くな!」
 琥耶姫は、刻を睨み付けた。
「おまえは黙って、わらわに惟三の動向を知らせればよい。化瑠魂を使用した蒜壷は生体から黒いオーラ―を発している。おまえのその眼なら、どの人間が惟三が化身した人間か見分けることができるだろう」 
「ワカッタ。コク、クタヒニシラセル」
 隻眼の鴉は、一つ眼を光らせ、コールタールのような黒い羽を羽ばたかせた。
「吉報を待っているぞい」
 隻眼の鴉は、琥耶姫の言葉を背に受けて、空の彼方に飛んで行った。

                       = 第二十七回に続く =

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