自作小説

餓鬼狩り (第二十七回)

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                      餓鬼狩り  (第二十七回)

 霞が関。日本の主な官公庁施設が立ち並ぶ地区として広く知られているこの界隈の一角に、日本の警察の頂点である警察庁が置かれている。
 その警察庁の一室に、室緒、村中、高橋がいた。
「室緒さん、なんで俺たちが、こんな堅苦しいところによびだされたんですか?」
 村中が聞いた。
「俺らみたいな地方の警官が、警察庁に呼び出されるなんて、上は何をかんがえているんでしょうね」 
 高橋が、村中の言葉を継ぐ。
「俺たちが、ここに呼び出されたのは、それなりの理由があるからだ。おそらく……」
 室緒が、おもむろに言葉を吐いた。
 I県の地方公務員でしかない室緒たちが、警察庁に呼び出されたのは、室緒たちが俄蔵山から帰ってきてから、三日後のことだった。
 一本の電話で警察庁に呼び出された室緒たちは、とるものもとらずに、そのまま直ぐに新幹線に乗り込み、霞が関にある警察庁に向かった。室緒たちは、警察庁に着くと、地下五階に通じる直通のエレベーターに乗せられた。その場で、屈強な男たちにボディーチェックをされ、窓が一つもない五階にある窓ひとつない室に通されたのだった。
 どれくらい時間が経っただろうか。薄暗い一室に通された室緒たちが、重厚な黒い革張りのソファーに坐していると、六十代だと思われる白髪の紳士と、三十代だと思われる二人の男が、室に入ってきた。
(おや?)
 室緒は、六十代だと思われる男に見覚えがあった。六十代の男は、七年前、この国の大臣を務めあげた男だった。 
 と、すると、後ろに控える三十代だと思われる男たちは、この男のボディーガードなのだろうか。サングラスに隠された瞳が力強く光っているようにも見える。
「おい、おまえら。挨拶ぐらいしたらどうだ!」
 サングラスをかけた男の一人が、室緒をなじった。
「それともなにかい、五十嵐元国務大臣には挨拶はできんというわけか」
 もう一人のサングラスをかけた男が、邪見に声をかける。
「そういうわけでは……」
 村中が、気弱に応えると、五十嵐元国務大臣が、サングラスをかけた男どもを、左手で制した。
「挨拶などしなくていい。おまえたちのことは、考え方、行動様式、性格、趣味や家族形成、そのすべてを、こちらで調べ上げた。そうだな、八木」
 五十嵐元国務大臣が、サングラスの男に確認をとる。
「はい」
 八木と呼ばれた男がうなずくと、五十嵐元国務大臣は、満足そうに口元を歪ませた。
「……時間がもったいない、八木、スクリーンを用意しろ!」
 五十嵐元国務大臣の前に陣取った男の一人が、はデスク上のパソコンのスウッチを入れた。デスクタイプのパソコンのスウッチが入ると、デスクの後方のスクリーンに、パソコンのモニターに映し出された画像が、そのまま映し出された。
「この女について、おまえたちが知りえた情報を、わしらに伝えてほしい」
 スクリーンには、火災で焼け落ちたと思われる古い木造家屋と、その前に立つ女の姿が映っていた。
「那美……」
 室緒が思わず、口走る。
「やはり、知っておったか。……この女は、いま、I県で起きている連続猟奇殺人事件に、深く関わっているはずだ」
 五十嵐元国務大臣は、眉間に皺をよせた。
 五十嵐元国務大臣は、那美について、どれくらいの事を知っているのだろうか?  連続猟奇殺人事件は、蒜壷一族の仕業という情報は得ているのだろうか?
 室緒を訝った。
「で、どうなんだ。この女は一連の猟奇殺人事件に関わっているんだろう。応えろ」
 室緒が、黙っていると、八木と呼ばれた男が、室緒たちに迫った。
「関わっていることは確かですが、彼女は、人を殺していません。人を殺しているのは、恐らく蒜壷一族と呼ばれるものたちです」
 と、室緒が言葉を返すと、
「ほう、蒜壷一族のことも知っているのか。それじゃあ蒜壷一族のことも、我々に教えてもらおうか。蒜壷一族のことで知りえたことをすべてを」
 五十嵐元国務大臣は、スクリーン上の那美の画像を、別な画像に変えた。
「こ、これは……!?」
 スクリーン上に映し出されたのは、着流しを着た犬の顔の人間だった。
「この絵は、明治の始めに撮られた写真だ。少々痛みが激しいが、合成写真ではない」
 五十嵐元国務大臣の指が、パソコン上で、スライドし、別な写真を、スクリーン上に出す。スクリーン上に現れたのは、俄蔵山に現れた巨大な怪物に似た化け物だった。
「これは、昭和の始めに山陰地方の、とある山麓で撮られた写真だ。少々、ボケているが、これも合成写真ではない」
 五十嵐元国務大臣は、次々とスライドを変えてゆく。スクリーン上には、様々な形態の化物が映し出されていった。
 犬の顔をした人間。カエルの顔と牛の身体を持った人間。三つの尾を持った巨大な白猫……。
 これらの一連の写真は、目撃された蒜壷一族の一部だと言う。
「蒜壷一族だと思われる写真は、ここ百年間の間に、わずか二十数枚のみしか残されてはいない。写真の他に蒜壷一族の存在を示す資料は、古い文献だけだ……」
「五十嵐元国務大臣」
 室緒は、五十嵐元国務大臣が、蒜壷一族が人を食する一族であるということが分かっているか知りたかった。
「大臣は、蒜壷一族がどんな一族が知っているのですか?」
「私は……。いや、私の組織は蒜壷一族を殲滅させるために造りあげられた組織だ。君ら以上に蒜壷一族のことは知っているつもりだ。蒜壷が人を食することも、平安の昔から、人の世に隠れ、生き続けてきたこともな」
「平安の昔からって!? 平安時代っていうことですか? 蒜壷一族は、そんな昔から、いたんですか?」
「もっと昔から……。もっと昔から、この国に存在してかもしれんが、記録に残っているのは、平安時代からだ」
 五十嵐元国務大臣は、そこで一旦言葉を切り、スクリーンに再び、那美の姿を映し出した。
「那美のことも、我々の組織が、五十年も前から追っている」
「えっ、五十年も前からですか!?」
 室緒は、思わず声をあげた。
 スクリーン上に映し出されている那美の姿と、室緒たちが見た那美の姿は同じ少女の容姿をしている。
「那美は、五十年前から、変わらない姿で現れているというわけですか?」
「いや、那美という女は、蒜壷一族同様、それ以前からこの姿のままで、この社会の中に存在していたかもしれない」


                     = 第二十八回に続く =

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