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自作小説

餓鬼狩り (第二十九回)

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                        餓鬼狩り   (第二十九回)

「那美は……」
 室緒は、ヘリ『あさぎ』の機内で那美と話した事を、目の前にいる五十嵐元国務大臣に話した。五十嵐は室緒の話を、ただ黙って聞いていたが、室緒が話し終えると、おもむろに椅子から立ち上がった。
「……君らが、那美から聞いたことは、我々の組織が、すでに知っていることばかりだ。蒜壷が人を襲って食することも、蒜壷が主に夜間に活動することもな。ただ、一つわからぬことがある……。なぜ、蒜壷が頻繁に出現するようになるんだ? 」
「それは……」
 室緒は、『あさぎ』の機内の中で、ふと漏らした那美の言葉を想いだしていた。
“どうやら、奴らは本気で、私が持つ十種神宝を狙っているようね”
 那美が、漏らした謎の言葉。十種神宝とは一体なんのことなのだろう?  蒜壷一族が、その命をかけて奪うべきモノなのであろうか。
「ここ十年の間、蒜壷が関わったと思われる事件は、五十件ほど確認されている。もっともこの数は、表に出てきた数字だがな。……実際には、その何倍もの人の命が、蒜壷のものの手によって奪われていると思っている。残念ながら我々の組織が、確認できたのは五十件だけだ。十年で五十件……。二百三名の人間が犠牲になった」
 五十嵐元国務大臣は、そこで一旦言葉を切り、再び、パソコンを操作した。
「三ヶ月。……ここ三ヶ月で二十件もの蒜壷が起こしたと思われる事件が相次いで起きている。十年で五十件が、三ヶ月で二十件だ。過去において、このように頻繁に蒜壷が現れたケースはない」
 五十嵐は、言葉をいったん切り、傍らの八木という男の目くばせをした。八木は室のなかにあるロッカーのダイヤルキーを回して、そのロッカーの中から、B5版ぐらいの大きさのアタッシュケースを取り出した。
「そのアタッシュケースの中を開けてみろ」
 室緒はアタッシュケースを開けた。
「これは……!?」
 アタッシュケースの中には、SATと呼ばれる警察のエリート部隊が使用する半プラスチック拳銃があった。グロックといわれるものだ。その拳銃と、黒光りする十個の弾丸が、アタックケースの中に収められていた。
「この銃と弾丸は、我々の組織がグロックの本社に赴いて、特別に造させたものだ。SATが使用している拳銃よりも数倍の威力と殺傷能力がある」
 五十嵐は、眼を光らせた。
「君たちが使用するニューナンブ60でも、食肉や針口は撃退できる。が、彼らを操る上位の蒜壷には、君らの貧弱な銃では通用しない。この銃と特殊な弾丸だけが上位の蒜壷にダメージを与えることができる」
「この銃を、俺たちにくれるというのですか?」
 室緒が五十嵐に訊いた。
「ただでくれるわけではない。君たちは、これから我々の組織の管理下に置かれる」
「管理下に置かれるとは、どういうことですか?」
「言葉どおりの意味だ」
「言葉通りの意味ということは、……俺たちは五十嵐さんの下で働くということですか?」
 五十嵐の言葉に、村中は目を白黒させた。
「I県の県警本部から。いきなり五十嵐さんの率いる組織に出向ですか……」
 村中の隣で、高橋が頭を掻く。
「すでに、県警の本部長から承諾を得ている」
「承諾!? 承諾じゃあなくて、至上命令でしょう」
 室緒は、なんの断りもなしに、五十嵐が率いる組織に編入されたことが、おもしろくなかった。乱暴にアタッシュケースの蓋を閉めた。
「不服かね……。室緒くん」
「いや……」
 五十嵐の率いる組織には、マスコミをも操作する強い力がある。強力な武器を持ち、それを調達できる資本力があるだろう。彼らの手で葬った蒜壷の者も数多くいるだろう。五十嵐の自信たっぷりな口調から、それはうかがえる。
「室緒くん、我々の組織がどんなものなのか、君には推測できるだろう。我々の組織以外に蒜壷と対決できる組織はない。我々の組織に加わることは、一警察官として名誉な事とは思わんのか」
 確かに、この五十嵐の組織に入れば、この手で、蒜壷を追いつめることができるかもしれない。が、いきなり警察庁の地下に連れてこられて、組織に編入とは、乱暴すぎるのではないか?
 五十嵐は、まだ、組織の名も、その規模も話してはいないのだ。
「室緒くん、村中くん、……、それと高橋くんだったかな」
 五十嵐元国務大臣は三人を見渡した。
「何を迷っている。君らはもう迷えないんだ。那美と、我々の組織のことを知った君らには、選択の余地はない。こうしている間にも蒜壷は、人を襲っている。大野、例のものを三人に……」
 五十嵐元国務大臣は、もう一人のサングラスをした男に指示を出した。
 大野と呼ばれた男が、壁に突き出ている青いボタンを押すと、室緒たちの後方にある壁がスライドした。大野は中から迷彩色に彩られた防護服を取り出した。
「その服は特殊繊維の中に、形状記憶可能なレアメタルを織り込ませた素材で造った防護服だ。刃物、銃器の弾丸を跳ね返す強さと、容易に動き回れる柔軟性を備えている」
 その防護服は、アメリカンフットボールの選手が着込むジャージに似ていた。ワンタッチで着脱可能なプロテクターをつけるとフットボールの選手のようにも見える。
「防護服の内側に、グロップxxx(スリーエックス)と特殊弾丸を仕舞い込むポケットが付いている」
 五十嵐元国務大臣が、防護服の仕様をさらに説明した。
「俺たちに、蒜壷と戦えと……」
 室緒が呟く。
「言っただろう。我々の組織は蒜壷一族を殲滅させるために創られた組織だと。我々の組織だけが蒜壷と戦うことができ、那美の秘密を解き明かすことができるんだよ」
 五十嵐元国務大臣は、声高々に叫んだ。
 パソコンに連絡が入った。
「代々木です。H-A3追跡中に、数匹の餓鬼を発見。これから殲滅にかかります」
 連絡は組織の者からの通信だった。
「H-A3は、どうしている?」
 五十嵐が、パソコンのモニターに映る代々木に向かって言う。
「餓鬼たちの後方にいて、我々の動向を探っています」
「餓鬼の種はなんだ?」
「鑊身(かくしん)です。鑊身の数……。およそ二十匹」
「鑊身か……。代々木、そちらにはおまえを含めて何人の隊員がいる」
「七名です」
「鑊身とH-A3相手に七名か……。すぐ応援を出すから、無理するなよ」
「了解」
 五十嵐は、通信を切り、室緒たちと向かい合った。
「聞いての通り、隊員が蒜壷との戦いに入った。一刻の猶予もならん。君たち三人は八木、大野と一緒に現場に向かってくれ」
 
                     = 第三十回に続く =

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