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自作小説

餓鬼狩り (第三十一回)

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                       餓鬼狩り  (第三十一回)

 室緒は、村中、高橋とともに五十嵐元国務大臣が率いる組織AHO(オー)の特殊車両に乗っていた。見かけは、トヨタのハイエースにしか見えない特殊車両は、一般市民に不信感を与えないためにハイエース ワゴン標準ボディ スーパーカスタムGモデルでカモフラージュしているが、もともと耐久性が高いハイエースのボディーを特殊ポリマーでさらに強化し、トランスポーター部分には、最新のハイテク機器を積み込んでいる。車両の上部にはスキーボーダーに見せかけたロケットランチャー砲を備えていた。
 運転席には警察庁の地下五階の部屋で、出会ったばかりの大野が乗っている。助手席には八木が乗っていた。室緒らは後部座席にいた。
「あの~う、すいません。これからどこに向かうんですか?」
 村中が、大野に訊ねた。
「新宿御苑だ」
 大野は短く、吐き捨てるように言った。
「新宿御苑ですか。すると、そこに蒜壷一族がいるわけですね」
「そうだ」
「俺たちは……。その~う、蒜壷一族とやらに勝てるんですか? 蒜壷一族っていうのは、いうなれば化け物の集団でしょう」
 俄蔵山に現れた餓鬼、食吐は那美が葬ったが、那美があの場にいなければ、ヘリごとやられていたかもしれない。 村中は、いまでも食吐に襲われた恐怖を忘れることができないでいた。
「勝てる。俺たちはこの手で何十という数の蒜壷を葬って来た」
 大野が、村中の困惑を退けるように言う。
「しかしですね。身長五十メートルを越す餓鬼を葬ったことはないでしょう」
「食吐は例外だ。我々の組織でも食吐の出現は予期できなかった」
 組織AHO(オー)が、いままで確認した餓鬼の種は九種。食吐は十番目の餓鬼の種になる。俄蔵山に現れた食吐は、文献でその姿を伝えられるのみで、存在を確認されていなかった。
「その~う。またその例外が出てきたら?」
「食吐は例外だと言っているだろう。蒜壷一族とて、そう簡単に食吐みたいな巨大な餓鬼を地上に降ろすことはせんだろう。都会の真ん中にそんな巨大な餓鬼を下ろしたら、直ぐに蒜壷一族の存在を、人に知られてしまうからな」
「それじゃあ聞きますが、鑊身って、どんな餓鬼なんです?」
「なんだ、おまえ怖いのか?」
「いえいえ、そんなことはありません。ただ、これから戦うにあたって……」
「鑊身は、身長三メートルほどの餓鬼だよ。口も目もなく、鼻で人の存在を感じる」
「目も口もないんですか? それっておかしいじゃあないんですか? 餓鬼って、ひとを食する化け物でしょう。どうやってひとを食べるんです。口がなけりゃあ、食べることができないじゃあないですか?」
「鼻だ。鼻から惨殺したひとの血液を、すする」
「鼻!? 鼻からですか」
 村中は、おもわず自分の鼻を左手で押さえた。
「ナビを代々木の視点に切り替えろ」
 大野が助手席に座っている八木に指示を出した。特殊車両のナビ画面が夜八時の新宿御苑の様子を映し出す。
「代々木、そっちはどういう具合だ。荻隊長の作戦は?」
「オペレーション Dで掃討します」
 ナビから、代々木という男の声が聞こえた。
「オペレーション Dか。鑊身相手なら、そのオペレーションだろうな。いいか、鑊身は殺しても、H-3Aは殺すなよ。身柄を確保しろ」
「はい」
 荻班の副隊長である代々木は、短く応えた。
「H-3Aとは、どういう蒜壷なんです?」
 室緒が、八木に訊いた。八木は答えない。話したくないのか、室緒の方を見もせず、ただ黙っている。
「八木、話してやれ。いずれこいつらもH-Aシリーズの蒜壷と会いまみえることになるだろう」
 と、大野が言った。
「ふっ、大野さんの命令だから、しかたがないか……。まだ組織に入ったばかりのあんたらに言うのは早いと思うんだけどな。……我々は、蒜壷一族をH-AシリーズとH-Bシリーズに大別している。H-Bシリーズというのは、鑊身、食吐、食肉、針口などの知能の劣る、生存欲だけで生きている下等な餓鬼のことをさし、それに対してH-Aシリーズというのは、高い知能を持ち、人に化ける能力を持つ蒜壷のことをさす」
「人に化ける!?」
「ああっ、奴らは人に化けることを化身するといっている。人に化身し、人間社会に入り込み、下等な餓鬼を指揮し、人を襲い続けている。蒜壷一族の殲滅は、指揮者であり、幹部と目(もく)されるH-Aシリーズを確保することにかかっていると言っても過言ではない。いくら下っ端どもを殺しても、蒜壷一族の繊細な情報を掴まなければ、奴らを根絶やしにはできん」
「人に化けたH-3Aの顔は? 顔写真はないんですか?」
 室緒が八木に言う。
「……大野さん、見せてもいいですか?」
 八木が特殊カーを運転している大野に訊いた。
「かまわん、見せてやれ」
「了解」
 八木が助手席にあるパネル版に触れると、上部中央のルーフがスライドし、十二インチのモニターが三つ現れた。それぞれのモニターが、H-3Aのバストアップ、全身正面、全身側面、の姿を映し出す。
「こいつは伽羅という。狼の化けもんだ」
 大野がちらりとモニターを見た。
「狼の化け物!? 人間に化身する前は狼だというんですか?」
「我々のメンバーからの情報だ。信頼できる」
 日本狼はすでに絶滅しているが、狼の化け物とは、どのようなものなのだろう。狼の特性を備えているらしい蒜壷のようだが、西洋の妖怪狼男のようなものではあるまい。
「化身を解いた伽羅の画像……。狼の姿の画像はないんですか?」
 室緒が、大野に訊ねる。
「ない。過去に狼の姿の伽羅を見たメンバーは、伽羅によって惨殺されている。優秀な奴だったが……」


                             = 第三十二回 = に続く

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