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自作小説

餓鬼狩り (第三十五回)

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                       餓鬼狩り   (第三十五回)

 隻眼の鴉、刻は沼杉の枝の上に停まって、戦いの様子をうかがっていた。
 眼下では、食風が、呂騎と闘っている。俊敏に動き回る呂騎に、食風が数匹ががりで、呂騎にくらいつこうとするが、くらいつくことができない。呂騎は、食風たちを巧みに翻弄し、砥ぎすさまれた爪で、食風の皮膚を斬り割き、鋭い牙で食風の喉を食いちぎった。
 生き残った食風が、呂騎を追うことをやめ、立ち止った。よりそうようにひとつになり、手を取り合う。呂騎はひとつの集団になった食風に挑みかかろうとして、脚を止めた。第六感が、呂騎に危険を知らせていた。
「ぐうおおおおっおわっおー」
 風を喰らう食風が、一斉に風を吐き出した。すると、食風たちの身体が解け出した。皮膚が波打ち、血潮が音をたてて噴出し、骨が異様な音をたてて粉状になってゆく。やがて、スライム状になったそれは、ひとつなり、プラスチックを焼いたような異臭を放った。
 ところどころ黒々とした斑点が浮かぶ、半透明な怪物……。
 それは、もう餓鬼といえる代物ではなかった。スライムというより、原始の生物“アメーバ”に近い生き物だった。
 食風アメーバ―形態は、体の中央から、二対の突起物を出した。二対の突起物は視覚であろうか。呂騎の動きに合わせて、左右に動く。クチャクチャと不快な音をたてて……。
 呂騎は、うなり声をあげて警戒した。
「かなわないとみて、最終形態になったな」
 藪の中から、呂騎と食風たちとの戦いを見ていた惟三が、呟いた。
 グロップxxx(スリーエックス)の轟音が響く。組織AHOの生き残り、荻隊長が食風アメーバ―形態に向かって撃ったのだ。
「どういうことだ……。こいつら!?」
 グロップxxxの銃弾を喰らった食風アメーバ―形態は、七つほどに四散したが、すべて生きていた。それぞれ体の中央から二対の突起物を出し、うねうねと蠢いていた。
《気をつけてください。こいつら、その武器では倒せません》
 荻隊長の頭の中に、声が響いた。
「誰だ! 俺に話しかけている奴は誰だ」
 荻隊長が、周辺を見渡した。
《わたしは、あなたの横にいます》
「俺の横にだと……」
 荻隊長の横には、犬がいた。那美とともにここに現れた犬だ。
「おまえが? おまえが俺に話しかけているのか」
《はい。わたしは口では、人の言葉を喋れないので、直接、あなたさまの頭の中に話しています》
「テレパシィーとかいう奴か……」
 荻隊長は、呂騎をしげしげと見つめた。
「おまえのことは本部にあるファイルを読んだ。……テレパシィーを使えるとは知らなかったがな」
《人に対して、普段、テレパシィーは使いませんが、あなたがた組織AHO(オー)に対しては別です。わたしたちのことを知っていますから》
「ああっ、おまえたちのことはよく知っているよ。よく、知ってるけど、もっとよく知りたいもんだがね。呂騎、おまえらはなぜ、蒜壷と戦っている? おまえらは、一体何者なんだ」
《その問いには答えられません》
「答えられませんか……。そういうと思ったよ」
 荻隊長はオーバーなゼスチャァーでおどけてみせた。
 七つの食風アメーバ―形態の突起物が、チカチカと点滅する。
 黄色、青色と交互に点滅する食風アメーバ―形態の光が、荻隊長の眼を襲う。数秒後、再び、グロップXXXの轟音が夜の闇に響いた。
《な、な、なにをするんです……》
 呂騎の身体は轟音と共に、数メートル後方に吹き飛ばされていた。グロップXXXの弾丸が呂騎の身体を吹き飛ばしたのだ。呂騎は、その場に倒れた。動くことができない。息も絶え絶えだ。ピクピクと身体が痙攣している。鋼鉄の鎧を身にまとっていなければ、呂騎は最後の時を迎えていただろう。
 食風アメーバ―形態に、意識を乗っ取られた荻隊長は、倒れている呂騎に、グロップXXXの銃口を再度向けた……。

 「黙って俺たちに従えば手荒なことはしない。洪暫さまには、おまえを生かして連れて来いといわれているのでな」
 狼人間の姿に戻った伽羅が、那美に言う。
「魔を払う光破剣も、この身に届かなければ、ただの棒切れよ。いま、それを証明してやるよ」
 伽羅が動いた。が、その姿は確認できない。那美が光破剣を構え直した時、那美の背中に鋭い痛みがはしった。
「くっうっ……」
 背中を、伽羅のカギ爪で斬られた那美は、片膝をついた。
「ほんの小手調べに、背中をえぐらせてもらった。次はどこがいい……。腕か、それとも脚か……。いやいや、その美しい貌がいいかな」
 伽羅が動く。が、その動きは、那美には捉えることができない。那美が後ろを振り向いた時、那美は、右脚を襲った激痛に顔をしかめた。
 那美は地面に光破剣を突き刺し、懐から若草色の香袋を取り出した。香袋の中から、藤色の勾玉をとり、それを伽羅、めがけてかざした。
 那美の掌の上で、藤色の勾玉が淡く光る。
「なんの真似だ。そんな石を取り出して」
 伽羅は、ニヤリと笑い、動いた……。いや、動いたはずだった。
「なんだ!? どうした。俺の身体が……」 
 疾風の牙と言われる伽羅の高速の動きが封じられていた。動けるには動けるのだが、今の伽羅の動きは、老人のそれだった。
「おまえ、俺に何をした」
 那美は十種神宝のひとつ、道反玉(チガエシノタマ)を使って、伽羅の動きを鈍化させていた。藤色の勾玉の中には、十種神宝 道反玉の威力が封じ込めてあったのだ。
「おまえは、そこにいろ。いまは……」
 那美は、そう言い放つと、危機に陥っている呂騎のもとに、飛翔した。


                        = 第三十六回に続く =

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