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自作小説

餓鬼狩り (第三十六回)

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                        餓鬼狩り   (第三十六回)

「どうしたんです隊長! なぜ、呂騎を撃ったんです?」
 組織AHO(オー)の生き残り組の二人が、荻隊長の所に駆け寄った。
《ダ、だめだ。いま、そいつに近づいたら……》
 瀕死の重症を負った呂騎が、二人に精神感応を送る。 二人は、呂騎の精神感応に反応して立ち止った。
 荻隊長が振り向く。うつろな目で組織AHOの隊員を見た。
「た、隊長……」
 荻隊長の瞳は灰白色に濁っていた。ぶつぶつと何かを話し、口から泡を噴いている。ゆらゆらと頭を動かすしぐさは、酩酊状態にいる中年の男のそれだった。
 荻は、ゆっくりとグロップXXXの銃口の向きを変え、二人の隊員に、続けざまにグロップXXXの銃弾を浴びせた。
 新宿御苑内に二人の隊員の驚愕の悲鳴が響き、銃弾を浴びた隊員の身体が破裂する。強力な破壊力を持つ銃弾が、一撃で、人を肉塊に変えたのだ。
《なんていうことを……。その二人は、おまえの部下だったんだぞ》
 呂騎が呟いた。荻隊長は、おもむろに呂騎の方を向くと、再びグロップXXXの銃口を呂騎に向けた。
「そこまでよ」
 金属が擦り合わされるような音とともに、グロップXXXが、荻隊長の手から叩き落とされた。那美が頭上から光破剣で、荻隊長が持つグロップXXXを叩き落としたのだ。
「少しの間、眠っていてね」
 那美は、荻隊長の腹部に光破剣の柄を叩きこんだ。荻隊長は崩れるように、その場に倒れた。那美は呂騎を見た。呂騎は命の灯が消える寸前だった。直ぐに手を施さなければ、息絶えるだろう。
 那美は息も絶え絶えに横たわる相棒の元に行き、膝をついた。
「だいぶ、やられたわね……。生玉(いくたま)をつかうわね。私の生体エネルギ―だけでは、あなたの命を救えそうもないもの」
 那美は、懐から若草色の香袋を取り出し、香袋の中から緋色(あけいろ)の勾玉を取り出した。緋色の勾玉を左手で握りしめ、右手を呂騎の身体に置いた。那美の左手の中の緋色の勾玉が淡く光った。呂騎の身体の上に置いた那美の右手の掌が、それに呼応して緋色に光る。
 時間にして、わずか三秒。三秒で、それまで虫の息だった呂騎が立ち上がった。
《那美さま、ありがとうございます》
「礼を言われるまでもないわ。あたりまえのことをしただけよ」
 那美は緋色の勾玉を、香袋にしまいこんだ。
《傷を負ったのですか? 那美さま》
 呂騎が、血が染みた那美の胴着を見る。
「平気よ。傷口はすでに塞がっているわ」
 那美は、常に身につけている十種神宝のひとつ、生玉によってその身体を守られていた。傷を負っても、よほど深い傷出ない限り、那美の身体は、瞬時に回復する。
「食風アメーバ―形態ね」
 那美が七つの食風アメーバ―形態を光破剣で指し示した。
「片づけるから、そこでみていて」
《那美さま……。くれぐれも、あの目にご用心を……》
「チカチカと光っているあれのこと?」
《はい……》
「心配しないで。そんなまやかし、通用しないわ」
 那美は風のように走り抜けた。 那美の光破剣が、食風アメーバ―形態を叩き斬る。光破剣を体内にぶち込まれた食風アメーバ―形態は、熱湯が注ぎ込まれた氷が解けるような音をたてて、瞬時に蒸発した。
「まずは、一匹……」
 那美は、食風アメーバ―形態を一匹始末すると、直ぐに二匹目の撃滅に取りかかった。
 新宿御苑内に入り込んだ、大野、室緒、村中、高橋は、見たこともない怪物の姿に戸惑っていた。
「なんですあれは? あれも蒜壷一族ですか?」
 村中の声の先には、食風アメーバ―形態の怪物たちがいた。
「那美と呂騎もいるぞ」
 室緒が言う。
「AHOのメンバーは? 蒜壷一族と戦っていたはずのAHOのメンバーは?」
 高橋が、大野に訊いた。
「隊長は、あそこにいる……」
 大野が、那美の傍らで意識を失っている荻隊長に顎を向けた。荻隊長は、うつ伏せになって倒れている。ここからでは、判断することはできないが、大きな怪我はしていないように見える。
「うっうっ、ううううっ……。大野さん……。大野さん」
 大野の姿を見つけたのであろうか、藪の中から、ひとりの男が這い出してきた。
「矢口!?」
 男は、組織AHO(オー)の隊員だった。腹を斬られたのであろうか、腹部から、大量の血を流している。
 大野が、血まみれになって藪の中から這い出てきた男の元に駆け寄った。男の身体を抱き寄せる。
「大野さん……」
「しっかりしろ! 何があったんだ?」
「……や、やられましたよ。やられ、て……しまいましたよ」
「やられたって……。優秀な君らが餓鬼どもにやられたというのか」
「伽羅にです……。伽羅一人にやられてしまいました」
 矢口は肩で息をしながら、指をさした。
「あれは……。あれが伽羅か」
 指の向こう側、人狼がいる。ぎこちなく動き、こちらを睨んでいる。
「那美が……、那美が伽羅に何かをしたようです。伽羅の動きがとまっています……。大野さん、いまです。伽羅を捕まえるなら、いまです」
「わかった。いまボタモチと連絡をとる」
 大野は耳にさしこんでいる通話機を伸ばし、口にあてた。
「八木、状況が変わったもう一度、ボタモチから電磁網を打ち出せ」
「了解」
 苑外にいる特殊車両ボタモチから、電磁網が発射された。

                    
                  = 第三十七回に続く =

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