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自作小説

餓鬼狩り (第四十一回)

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                      餓鬼狩り   (第四十一回)

 荻隊長が那美の写真を見たのは、まだ一介の隊員の時だった。
少女はきゃしゃな姿だった。ファッションショーの舞台で、颯爽と歩くモデルのような細い体だった。
 こんな身体で、蒜壷一族と戦っているのか? 街にたむろするチンピラに、からかわれるような容姿ではないか……。
 荻隊長は食い入るように写真を見つめた。
 見れば見るほど、そこらへんにいるチンピラにもつけいられるような細い体……。が、その眼は……。
 感情を押し殺したような、情も憐憫もなさそうな眼。愁いを帯びた切れ長の睫毛の裏に隠された瞳ー。なにもかも拒絶するような瞳を持った那美の写真は、二十歳そこそこにすぎなかった若者の心を凍らせた。
 どんな人生を歩んできたら、こんな瞳になるんだ!? この少女は、一体どんな人生をおくってきたというのだ。
 直属の上司に手渡された写真の中の那美の姿に、怖れを抱いた荻隊長は、思わず手にした写真を落としそうになった。
(あの写真は、昭和五十年頃に撮られた写真だという……)
 荻隊長は、目の前の那美を凝視する。
 写真の中の那美は、二十歳前後の少女の姿だった。ここにいる那美もまた、二十歳前後の少女にしか見えない。
「歳をとらない……。おまえが歳をとらないということは本当のことなのか?」
 荻隊長が那美に言う。
 那美は応えない。ただ、黙ってうつむいている。
「おい、そこのいる犬コロ、おまえが応えろ! さっきみたいに頭の中に話しかけて来い」
 荻隊長は、呂騎に話を振った。呂騎も答えない。悲しそうな眼をして荻隊長を見つめている。
「どうした、なぜ黙っている。お得意のだんまりか。都合がわるくなると口をふさぐのか!」
 荻隊長は立ち上がろうとして、よろめいた。
「立つな! 休んでいろ。おまえは、まだ立ち上がれる状態ではない」
 大野が、村中、高橋の肩に抱かれている荻隊長に言った。
 夜空にティルト・ローター独特の歪のある轟音が響いた。V22。いやオスプレイといったほうが分かりやすいだろうか。2012年10月に沖縄の米軍普天間飛行場に配備され、沖縄県民の配備反対の集会を呼び起こした水直離陸輸送機ヘリ、あのオスプレイである。
「佐賀空港に配備予定の機から、一機、借り受けている」
 大野が、当惑顔の室緒たちに言った。
「あれで伽羅を運ぶわけですね」 
 と、室緒が言う。
「小笠原諸島にあるN島に運ぶ」
「N島ですか?」
「N島に組織の研究施設がある。蒜壷一族に対抗するために造られた施設がな」
 小笠原諸島に浮かぶN島は、周囲五百メートルほどの小さな島だ。島の周りは断崖絶壁で覆われていて、立ち入ることさえ容易でない。組織AHO(オー)は、万が一のことを考えて、組織AHO(オー)の本部がある警察庁にではなく、N島に対蒜壷一族施設を造っていたのである。
「おまえらも、これからそこに行く」
「俺たちもですか?」
 室緒が応えた。
「そうだ。怪我をしている荻隊長を除いて、ここにいる全員が、オスプレイに乗り込み、N島に行く。……那美、おまえもこないか? 来て、協力してくれると嬉しいんだが」
 大野の問いに、那美は首を振った。
「そうか……。それじゃあ、今回はあきらめよう」
 大野は踵を返した。
 水直離陸輸送機V22オスプレイが、苑内に着陸した。ハッチが開き、数人の男たちが、蒜壷専用の特殊な檻を中から下ろした。それは、檻というよりも巨大な透明な棺桶と言ってもいい代物だった。男たちはキャスターにそれを乗せて、伽羅の所に運んだ。
「八木、電磁網のスィッチを切れ」
 大野が、ボタモチ内にいる八木に連絡を入れると、周辺に響いていた耳障りな音が消えた。
 オスプレイから降りた男たちが、電磁網の電源が切れていることを確認し、伽羅の身体から電磁網をはぎ取った。うつぶせに倒れている伽羅を二人がかりで檻の中に運び込む。意識が失っている伽羅を、オスプレイの中に運び込むまで数分しかかからなかった。

                      = 第四十二回に続く =



  おいしいよ



 
 
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