FC2ブログ

自作小説

餓鬼狩り (第五十一回)

 ←餓鬼狩り (第五十回) →餓鬼狩り (第五十二回)
                       餓鬼狩り   (第五十一回)

 琥耶姫に寄り添うように付き従っている、おかっぱの七歳ぐらいの女の子は、右目に眼帯をしていた。緑の下地に黄色い花を散らばめた浴衣を着ている。絶えず周囲に眼を配って歩く姿は、七歳の女の子とは思えない。
「クヤヒメ、ワタシ、カラスノ、スガタノホウガ、イイト、チガウカ?」
 女の子は、化瑠魂を使って人間体に化身した刻だ。
「その姿で、人を襲え」
 琥耶姫が言う。
「コノスガタデカ? コノスガタデ、オソウコトニ、ナンノイミガアル?」
「人は、子供には甘い者よ。まして女の子となるといっそうな……。いまの刻の姿をみたら、組織AHOの奴らでも油断するだろうて」
 琥耶姫は、意味ありげな笑みを漏らした。
 刻は、斥候を得意とする鴉の姿をした蒜壷である。闇の中でも見える眼を持ち、嗅覚、聴覚が他の蒜壷より優れてはいるが、戦闘能力は、それほど高くはない。戦うことより、探索を得意とする刻は、良きパートナーでもある琥耶姫の命を受け、極異界から人間界に忍びこみ、人間たちや那美の動静を探っているのである。
「ユダンシタヒトヲ、ヤルノカ?」
 刻が言う。
「そうよ。おまえも一度、人を殺りたいだろう」
「ヤリタイ、ヤリタイ、コクモ、ヤリタイ。サグルダケジャア、ツマンナイ」
 女の子の姿をした刻は、ケラケラ嗤った。
「琥耶姫はん、わいらだけで大丈夫でしゃろか? この施設はAHOのかなめといえるものでっしゃろ」
 惟三が言う。
「心配するな。たかが人間ごときに何ができる」
 そう、黒のライダースーツで身を固めている、風のイが言う。
「そやかて、わいらの可愛い餓鬼が、いつも奴らにやられてしまっているだよ」
 惟三は、目じりを下げた。
「情けないことを言うなよ、惟三。餓鬼がやられる前に、われらで、AHOのメンバーを殲滅すればいいだけのことだろ。違うか?」
「しかしですな。AHOの力は、あなどれませんでっせ。グロップXXXという銃の弾丸は、わいらの身体も撃ち抜くし……。あの伽羅はんでさえ、奴らの使う電磁網という奴にからめとられたんでっせ」
「伽羅は、那美によって動きを封じ込められていたのんだろう。那美があそこにいなければ、AHOなど、伽羅の敵ではなかったはずだ」
 風のイが舌を鳴らした。
「伽羅はんは、那美はんの持っている道反玉(ちがえしのたま)というものに、やられてしもうたがや」
「道反玉か……。気をつけんとな……」
 惟三の嘆きに、大地のヌが、そう、呟く。
 蟹のような体格で、筋肉の塊ともいえる身体を持つ大地のヌもまた、黒のライダース―ツを身にまとっていた。暗闇でも眼が利くのであろう。レイバンのサングラスをかけている。
「刻、敵の動静は?」
 風のイが訊く。
「コノチクニオケル、テキノカズ、ジュウサンメイ。モウスグ、センコウシテイル、ジキホウニ、セッショクスル」
 刻は、潰れていない左の眼を光らせた。


                         = 第五十二回に続く =
スポンサーサイト


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 自作小説
もくじ  3kaku_s_L.png 市民劇場 裏話
もくじ  3kaku_s_L.png 命の輝き
もくじ  3kaku_s_L.png 映画鑑賞記
  • 【餓鬼狩り (第五十回)】へ
  • 【餓鬼狩り (第五十二回)】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【餓鬼狩り (第五十回)】へ
  • 【餓鬼狩り (第五十二回)】へ