FC2ブログ

自作小説

餓鬼狩り (第五十三回)

 ←ラグビーカフェ  釜石 →餓鬼狩り (第五十四回)
                      餓鬼狩り   (第五十三回)


「あっちにもいるぞ」
 高橋が指をさした。
 数千の毒虫が作りだす球体は、ひとつではなかった。夕闇の空に二十ほどの黒い球体があった。
 黄色と緑の縞模様の背に、小さな白玉を散りばめたような身体を持つ三センチほどの甲虫が、翅をうならせて空中に舞っている。毒虫の舞う音が、辺りに、不快な響きとなって漂う。これだけの数になると、蚊の鳴くような音にしか聞こえなかった翅の音が、痛みをともなう圧力になって迫ってくる。
「この戦闘服(ふく)、大丈夫なんでしょうね」
 不安にかられた高橋が、野村に言う。
「組織AHOを信じろ。たとえ数万匹の毒虫に襲われようと、この装備さえ外さなければ、大丈夫だ」
 不用心にも、硬質プラスチックマスクを外した村中は、毒虫にやられてしまった。解毒剤はないという。麻酔から覚めた後、脳を毒虫の毒でやられた村中を待っているのは、狂気に満ちた世界だけなのだろうか。
 野村は、システムウェポンの安全装置を外した。野村の部下も、システムウェポンの安全装置を外す。
「撃て!」
 野村の号令で、二十数名の隊員の持つ機銃から、緑色の液体が勢いよく放たれた。室緒、高橋も、遅れて機銃から緑色の液体を、毒虫の球形に向かって放つ。液体は殺虫剤だ。緑色の液体を浴びた毒虫が、バラバラと下に降りてくる。
「手を抜くなよ。群れているいまが千才一遇のチャンスだと思え」
 野村が部下を叱咤する。
「ぐわっ!」
 野村の斜め右方向八メートルにいた隊員が、一人のけ反った。毒虫にやられたわけではない。食法が、現れ、手にした鎌で隊員の脇腹をかき切ったのであった。
 現れた食法は、一匹だけではない。組織AHOの隊員の腹を掻ききった食法の後方に、数十匹の食法がいる。
「食法のおでましか……。A班は、そのまま毒虫にあたれ。B班は食法に対処。C班は、H-Aシリーズの出現に備えよ」
 現れた食法の数、およそ三十体。手に西洋の妖怪死神が持つような大鎌を持っていた。
「室緒さん、食法が現れましたよ。四人だけで、奴らと対峙して、大丈夫なんですかね」
 高橋が言う。高橋は、室緒、蘭賀、植山とともに、食法と戦うB班だった。
 蘭賀、植山は訓練を積んだ対餓鬼チームのエキスパートだが、高橋、室緒は、つい最近組織AHOに加入した人間だ。ここN島で過酷な訓練をこなしたとはいえ、不安はぬぐいきれない。
「過去二回の食法との戦いで、AHOは、食法の弱点を把握したと聞いている。そうでしょう、蘭賀さん」
 室緒が、行動をともにする隊員にひとりに声をかけた。
「食法なんか、怖くねえよ。あいつらは、毒虫がいなけりゃあ、てんで話にならねえんだ」
 蘭賀が、機銃のトリッガーを引き、アタッチメントを変えた。
「50ミリマグナムを喰らいやがれ!」
 機銃から、50ミリマグナム弾が、食法の群れに、一斉に掃射される。魂をえぐるような断続的な音が響き渡り、50ミリマグナム弾が、食法の腹をえぐり、食法の頭を吹き飛ばす。食法の群れは、手や脚を破壊され、断末魔の悲鳴をあげた。
「わいらの、かわいい餓鬼になにしやはる」
 惟三が、食法の群れの奥から現れた。風のイと大地のヌもまた、惟三とともに現れる。
「卑眼の惟三のおでましか……。みんな、わかってるな」
 野村が、ゴーグル上部にあるスウッチをスライドさせた。視界が赤外線モードに変わる。
 卑眼の惟三の眼には、人の眼を幻惑させる力がある。先の闘いで痛手を負った組織AHOは、惟三の眼に対して、対策を立てていたのであった。
 大地のヌが吠えた。大地のヌの咆哮は、辺りの地場を震動させた。
 野村隊長が、率いる対H-Aシリーズの面々は、背に背負っているジェットパックを作動させた。
「室緒、おまえらも空に上がって戦え! 重い機銃を持って宙で戦うのは、きついだろうが、地の底に落されるよりはましだろう」
 と、野村が言う。
 室緒、高橋、蘭賀、植山のB班も、ジェットパックを作動させて、宙に飛立つ。
 風のイが、両手をあげた。気合こめて、頭の上で両手を合わせた。その両手を、空に上がった組織AHOの隊員、めがけて振り下ろした。
 風が、組織AHOの隊員たちに襲いかかる。秒速二十メートル級の台風なみの突風が、うなりをあげる。突風を交わしきれなかった組織AHOの隊員二名が、食法が群がる大地に叩き落とされた。大地に叩き落とされた隊員は、腰や胸を、したたか打ち、立ち上がれない。苦痛に顔をしかめ、肩で息をしている。
 その身動き取れない隊員二名に、食法の群れが襲いかかった。


                         = 第五十四回に続く =


にほんブログ村
スポンサーサイト


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 自作小説
もくじ  3kaku_s_L.png 市民劇場 裏話
もくじ  3kaku_s_L.png 命の輝き
もくじ  3kaku_s_L.png 映画鑑賞記
  • 【ラグビーカフェ  釜石】へ
  • 【餓鬼狩り (第五十四回)】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【ラグビーカフェ  釜石】へ
  • 【餓鬼狩り (第五十四回)】へ