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命の輝き

サンマは、秋の味覚である!

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                 サンマは秋の味覚である


  食欲の秋がやって来た。
  この季節になると、無性に秋刀魚(サンマ)が、恋しくなる。
  で、去年、書いた秋刀魚を題材にしたエッセイをそのまま、ここに載せちゃうぞ。
  (なぜ、去年、書いたものを今頃になって発表するのかは、聞かないで!)


         「サンマは、秋の味覚である!」

   白いお皿に、魚が置いてある。
   焼き魚にされた秋刀魚である。
   厚みがある。頭から背中にかけて盛り上がり、脂がのっている。
   眼も濁っていない。黒ずんでいる。新鮮でおいしい秋刀魚だと
   いうことが、小生にもわかる。
   秋刀魚に、醤油をたっぷり垂らす。良く肥えた身をほぐし、
   大根おろしとかけまぜ、二本の箸で口の中に放り込む。
   おいしい。脂がのっていて、頬がとろけるように旨い。
   さすがに旬の味覚だと呼ばれることだけのことはある。
   胃袋が、きゅっと閉まるようなおいしさだ。
   秋の味覚は、数多くあるけれど、秋刀魚の旨さに
   かなうものはないなと独りごちる。
   さて、この秋刀魚。秋に食べる刀のような魚と書いて
   秋刀魚という。
   うまく言い得て、語呂もいい。
   が、その昔、サンマは秋刀魚とは記されなかったらしい。
   辞書をひいてひも解くと、サンマのことを「狭真魚」と書いて、
   サマナと記してみたり、漢字表記で「青串魚」と書いて、
   サンマと呼んでいたらしい。
   『吾輩は猫である』の作者、夏目漱石大先生は、サンマのことを
   「三馬」と書いて、作中に登場させたりしている。
   サンマが、秋刀魚と表記されるようになったのは、大正時代
   詩人の佐藤春夫大先生が発表した『秋刀魚の歌』という
   詩によって、全国に定着してからだという。
   それまでは、サンマは「狭真魚」であったり、「青串魚」で
   あったり、「三馬」で、あったりしていたわけだ。
   そんなことを、つれづれに思案していると、母が台所から
   やってきた。
   「うまかった。やはり秋刀魚は、旬のものに限るな」と
   小生が言うと、母は意味ありげに、ニコリと微笑んだ。
   小生は、頭を下げ、
   「今年は、秋刀魚が不漁なんだろう。高い秋刀魚
    ありがとう」と言った。
   母は、小生の感謝の気持ちに、はにかんでいるようで、
   ぎこちない笑顔である。
   (まさか……)
   小生は、お皿の上の秋刀魚を凝視した。
   「これっ、本当に今年獲れた秋刀魚!?」
   「解凍ものよ。今年のは、まだ高くてとても買えないのよ。
   いま、一匹いくらすると思ってんの。一匹二百円もするのよ」
   「えっ? これっ、解凍ものなのかー えー ええっー」
   小生は、二の句が継げなかった。
   秋刀魚は旬の者に限る。旬のいまだから、こんなに
   旨いのだと、舌鼓をうっていたのに、いつ冷凍されたかも
   分からない、解凍ものを食べていただなんて……。
   「スーパーの店員さんが、言っていたけれど、その秋刀魚、一番
   脂がのっていた時期に冷凍したものだから、生のものと
   比べても、そう違いないって」
   母は、小生の隣に座り、炬燵の上にある秋刀魚の載った皿に
   箸をつけた。
   「うまいじゃあない。型が小さくて高い、今年の秋刀魚を
   食べるより、断然いいじゃあない」
   母は、解凍ものの秋刀魚が、気に入ったようで、猫が
   魚を食べるように、きれいに秋刀魚を、たいらげてしまった。
   秋には秋に獲れたものを、春には春に獲れたものを、
   食べるから、興があっておいしいのに、いくらなんでも
   冷凍物を食べておいしいだなんて……。

   しかし、なぜ今年は秋刀魚が獲れないのだろう。
   今年、秋刀魚が獲れなくなった理由の一つに、台湾や韓国、
   中国の船団による公海上での乱獲が伝えられている。
   日本を抜いて、秋刀魚魚獲量世界一となった台湾では、
   秋刀魚は揚げ物、煮つけや串焼きなどの料理に調理されて、
   多大な人気を博しているという。庶民の味として、日本以上に
   愛されているのである。
   ゆえに、これからも公海上での秋刀魚の乱獲は続くであろう。
   乱獲が続き、日本の食卓に旬の秋刀魚が並ばなくなったら、
   秋刀魚という表記は、別な表記に変わってしまうかもしれない。
   ちなみに、台湾での秋刀魚漁の拠点は、高雄である。
   その高雄の表記で、サンマというようになったりして……。
   そんなバカバカしいことを想いながら、二匹目の冷凍ものの
   秋刀魚に、箸をつけた小生であった。

秋の秋刀魚 1

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