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自作小説

餓鬼狩り (第五十九回)

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                     餓鬼狩り   (第五十九回)

 ナギから向かって、右側面の白い壁に小さなひびが入った。小さなひびは、蜘蛛の巣のようにしだいに大きくなってゆく。
「壁の厚さは、約十センチ……。コンクリートの打ちっぱなしのようだから……」
 ナギは、右手を開き、壁に押し当てた。
 コンクリートの壁が、粉じんをあげて崩れ落ちる。ナギは、人は一人通れるぐらいに開いた穴を覗き見た。
「こちらの通路には、ガスは漏れていないみたい……。琥耶姫、刻、僕から離れないで、敵の攻撃は、いっそう強くなるから」
 ナギと琥耶姫、刻は、ガスが充満している通路から、空調の効いた隣の通路に脚を運んだ。
 サイレンが鳴り響く。危急を知らせるサイレンだ。
「どうやら敵さんを、怒らせたみたいだ」
 ナギが、他人事のように言った。
「ナギさま、これからどうするのですか?」
 琥耶姫が、ナギに問う。
「一旦、屋上に出て、仲間を呼ぶさ」
 ナギは、容易に作戦司令室に近づくことができないであろうと悟った。琥耶姫、刻を犠牲にはできない。
「仲間って……、蒜壷の者をですか?」
 と、琥耶姫が問う。
「そう、組織AHO(ここの)奴らが、H-Bシリーズと言っている餓鬼をね」
 組織AHOは、蒜壷一族を二つの種に大別している。琥耶姫や刻、伽羅などの、脅威的な能力と知能を持ったH-Aシリーズ。欲食や針口、食吐などの本能のみで生きている餓鬼と呼ばれるH-Bシリーズ。ナギはH-Bシリーズの餓鬼を呼び寄せる気なのだ。
 数十を越える銃声が、一斉に響く。
 危急のサイレンの音を聞きつけ、ナギたちがいる通路になだれ込んだ組織AHOの警備員が、ボルト式散弾銃に似たグロップ3Sを、ナギたちめがけて撃ったのだった。が、グロップ3Sから放たれた弾丸は、ナギたちには届かない。ナギ、琥耶姫、刻の身体に当たる直前、跳弾となって弾け飛んだ。
「僕らの周りに張った空気の膜は、特殊な膜でね。防護力も優れている。ちょっとそっとのダメージを受けたところで壊れやしないよ」
 と、ナギが言った。
「ナギさま、こやつらは、わらわのこの剣で」
 琥耶姫が、右腕を突き出した。右手の手の甲からノコギリ状の剣が飛び出す。
「いくらおまえでも、あんな強力な武器を持った奴らには勝てやしないよ。あいつらを二、三人殺して死ぬつもりかい」
「しかし、このままでは……」
「僕の後ろに隠れて、一瞬、空気の膜を外すから」
「えっ!?」
「膜をはっていると、こちらからも攻撃ができないんだよ。敵の銃撃が収まったら、一度、空気の膜を外す」
 組織AHOの警備員たちは、弾丸では通用しないと悟って、後方から火炎放射器を持ってきた。
「いまだ」
 ナギが、空気の膜を外し、眼を光らせた。
 すると、部隊の前列にいた警備員たちに異変が起こった。前列の組織AHOの警備員たちは、一斉に後ろを向き、後方の味方に向かってグロップ3Sを、ぶっ放したのである。
「さあ、行こう。こいつらが混乱している間に……」
 ナギと琥耶姫、刻は、同士討ちをしている組織AHOの警備員の間を悠々とすり抜けて行った。

  室緒らに後を任せ、ナギの行方を追う那美と呂騎は、マルハチの林の中にいた。
 那美の香袋に中にある十の勾玉のうちの一つ、琥珀色の勾玉が淡く輝いた。
 那美は香袋の中から、琥珀色に輝く勾玉を取り出し、宙に放る。琥珀色の勾玉は宙で銅鏡になり、那美の手元に戻った。
「ナギが組織AHOの施設の中で、暴れている……」
 三角緑神獣鏡にも似た那美の持つ十種神宝の一つ奥津鏡が、施設の中で破壊活動をしているナギたちの姿を映し出していた。
《同士討ちしているようにも見えますが?》
 と、呂騎が言う。
「ナギの精神コントロールよ。惟三も似た能力を持っているけれど、ナギの精神コントロールは、桁違い」
 ナギに操られた組織AHOの警備員たちは、破壊と殺戮の限りを尽くしていた。同じ組織AHO警備員が、次々とナギの操る警備員に倒され、施設の中の資材や防衛装置が壊されてゆく。
《那美さま、このままでは組織AHOは……》
 奥津鏡に映し出される映像は、組織AHOの崩壊を予期しているかのようだった。通路のいたるところに、グロップ3Sで無残な姿に変えられた死人が横たわっている。瓦礫の山となった施設の様子は、見られたものではない。
「長い間、蒜壷一族と戦い続けてきた組織AHOは、そんなにやわじゃあないわよ。見て」
 那美は奥津鏡を見ながら言った。
 組織AHOは、新兵器、ヒューマノイド型ロボットを繰り出してきた。
《ロボット!? 》
 呂騎が、奥津鏡に映る組織AHOの新兵器を見て、戸惑った。
「精神攻撃を受けない兵器……、ヒューマノイド型ロボット。人の意識に直接攻撃を仕掛ける蒜壷に対して、組織AHOが開発していたのでしよう。呂騎、私たちもグズグズしていられないわ。先をいそぎましょう」
 組織AHOは、蒜壷一族の過去の事例から、人の意識に直接攻撃をかけてくる蒜壷の者がいることを認識していた。奥津鏡に映っているヒューマノイド型ロボット、AHO-R20は、対蒜壷用に開発された特殊兵器である。
 那美は、奥津鏡を元の琥珀色の勾玉に戻し、呂騎と一緒に小走りにマルハチの林の中を駆け抜けて行った。


                      = 第六十回へ続く =



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