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自作小説

餓鬼狩り (第六十二回)

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                      餓鬼狩り   (第六十二回)


 夜空にできた裂け目から降ってきた餓鬼の数,およそ二百。悪鬼羅刹の怪物とは、このようなものたちのことを言うのだろうか。人に災いをもたらすためだけに生まれてきたような餓鬼たちが、組織AHOの研究施設の屋上に満ち溢れたのである。
 ナギが、右手の手の平を屋上の地につける。ナギの身体がオレンジ色に輝くと、屋上の地に亀裂が入り、それはやがて大きな穴となった。
「ここから、下にお行き」
 二百を超す餓鬼たちが、陥没したコンクリートの割れ目から下の階に降りて行った。

 組織AHOの作戦司令室にいる五十嵐参謀たちは、屋上で起こっている異変を察知し、全職員に非常警戒体制の指示を出していた。
 大野が言う。
「外にいるB-2地区に展開している野村隊長はどうしいた? まだ連絡はとれんのか」
 野村隊長率いる組織AHOの精鋭チームは、研究施設の外、B-2地区で食法と戦っていた。
 N島に駆け付けた那美と呂騎の活躍で、風のイ、大地のヌは滅び、Bシリーズである食法もいまや残りわずか。ヒキガエルの蒜壷、惟三は、戦意を失い、逃げ惑っているという。
「……野村です」
 野村隊長から、作戦司令室に連絡が入る。
「おおっ、野村くんか……。そちらの様子はどうだ。敵は殲滅したのかね」
 大野がそう言った。
「敵のB-シリーズ食法は殲滅しました。目下、逃げ回っている惟三を追跡中です」
「惟三はほっとけ! ただちに施設に帰還してくれ。施設が大変な事になっている。施設に潜入したナギという蒜壷が、夜空を割き、大量の餓鬼を施設に下ろした。ここにいる警備員だけではふせぎきれん」
 組織AHOの研究施設に潜入したナギ、琥耶姫、刻によって、すでに大勢の組織AHOの警備員がやられていた。そこに新たな餓鬼群が現れたのである。
「施設に降りた餓鬼は何ですか?」
「分からん。見たことにない餓鬼どもだ」
 大野は舌を打った。
「疾行と食毒と神通よ」
 と、那美が言う。
「そこから、屋上の様子が見えるのか?」
 大野が、那美の問う。
「奥津鏡に映る疾行と食毒、神通の数……およそ二百」
 那美の傍らに、辺津鏡と共に奥津鏡が置かれてあった。
「私は、呂騎と一緒に屋上に向かうわ……。施設にかけてあるバリア―を外してくれる」
 組織AHO研究施設の正門前にいる那美は、奥津鏡を元の勾玉に戻した。琥珀色の勾玉が那美の懐の中にある若草色の香袋にしまいこまれる。
 五十嵐参謀が言う。
「施設のバリアーは、君がそこに姿を見せた時に、すでにはずしてある」
「そう、気がきくのね」
 那美は若草色の香袋の中から、鴇色(ときいろ)の勾玉と藤色の勾玉を取り出し、宙に放った。鴇色の勾玉は光破剣となった。藤色の勾玉は薄い球形の膜となり、光破剣と辺津鏡を手にした那美と呂騎を包み込んだ。那美と呂騎を包み込んだ足玉は、ふわりと浮く。
 那美と呂騎の身体を包み込んだ薄い球形の膜は、十種神宝のうちの一つ足玉(たるたま)の力が具現化したものである。
「伽羅は、どこに閉じ込めているの?」
 那美は、手に持っている辺津鏡に映る大野に向かって言った。
「地下二階に設置されてあるクリスタル・ゲージの中に伽羅はいる」
「ナギたちは、そちらに向かうはず。二百を越す疾行、食毒、神通はナギの陽動作戦に使われているに過ぎない。警備員を地下二階に集中させて、私は屋上から下に降りてゆくから」
「敵の目的は伽羅の奪還なのかね?」
 五十嵐参謀が那美に問う。
「おそらく……」
 那美が応えると、
「よし、わかった。ここにいる警備員とは別に、地下二階には野村隊長率いる精鋭を送る」
 大野が、そう言った。
「野村さんたちは、食法との戦いで疲弊しているはずよ。大丈夫なの?」
「野村なら必ずやってくれる……野村なら……」
 大野は拳を握りしめた。
「参謀、五階のメディカル・センターから通信です」
 オペレ―ターが五十嵐に言う。
「メディカルセンターから? なんだ? つなげ」
 五十嵐が指示を出すと、メインスクリーンに荻の姿が映った。
「荻くん……。起きてていいのか。身体は大丈夫なのか?」
 大野が言う。
「こんな騒ぎの中で寝ていられるほど重病人じゃあねえよ。そうだよな、みんな!」
「おおっー!」
 荻の威勢に応える声が響く。組織AHOの職員たちだ。白衣の職員たちは戦闘用のプロテクターを羽織り、手には武器を持っていた。
「参謀、僕らも戦いますよ」
 職員の一人が言った。
「僕らもって……。君らは一般の職員だろう。大丈夫なのか? 相手は蒜壷一族だぞ」
「組織AHOの一人として、逃げるわけにはゆきません。心配しなくても大丈夫ですよ。荻さんもいるし……ここにいる者は誰ひとり逃げずに最後まで戦います」
 よく見てみると、戦闘用プロテクターに身を包んでいる者は、荻たちだけではなかった。蒜壷との戦いで怪我を負い、寝ていなければならない警備員たちもその中にいた。
「荻さん、ナギ、琥耶姫、刻は、私に任せて。荻さんたちは疾行、神通、食毒をやって頂戴」
 メディカルセンターに、那美の声が響く。
「その声は……、那美か? 教えてくれ、疾行、神通、食毒はどんな餓鬼だ」
「疾行はね……」
 那美は、それぞれの餓鬼の特徴と能力を辺津鏡を通して、メディカルセンターにいる荻たちに話した。
 疾行は、脚の筋肉が異常に膨れ上がった鋼鉄の身体を持つ餓鬼。乱れきった頭髪を振り乱し、脚力をいかして体当たりをしてくる。鋼鉄の身体で、粉砕した敵を腹にある巨大な口で食べるのである。神通は、口が両手の手の平の中にある餓鬼。身体に無数に点在する目で相手を威嚇し、苦痛を感じることない身体で襲いかかってくる。食毒は、黒いボロボロの僧衣をまとった餓鬼。氷の剣と炎の剣を操り、襲ってくる。
「みんな、一癖も二癖もある餓鬼たちよ。油断しないでね」
 那美が、荻たちのそう注意を促した時、メディカルセンターの入り口のドアが弾け飛んだ。
 疾行、食毒、神通らの餓鬼がメディカルセンターになだれ込んだのである。


                         = 第六十三回に続く =




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