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自作小説

餓鬼狩り (第六十三回)

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                       餓鬼狩り   (第六十三回)

「来たな!」
 荻は、短く言い、肩に担いでいるロケットランチャーからロケット弾を、餓鬼群めがけて撃ちこんだ。
 腹の底にズシリと轟音が響き、血と肉片となった餓鬼群の死体が宙に舞い上がる。
「攻撃の手を緩めるな。行け、行け、行け!」
 メディカルセンターにいる数十人の男たちが、一斉にそれぞれの武器を、餓鬼群めがけて撃ちまくる。
 荻のようにロケットランチャーを撃つ者もいれば、組織AHOの標準装備品であるグロップXXXを撃ちまくる奴もいる。対食法戦で使用されたシステムウエポン装備の機銃で、50ミリマグナム弾を撃つやつもいた。
 メディカルセンターは、一瞬で戦場と化したのである。
「どんな奴らかと思ってけれど、全然てごたいないじゃん。怖いのは顔だけかー」
「そうそう、ゾンビ映画に出てくるゾンビたちの方が手ごわいかも知れないな」
 組織AHOの職員たちは、軽口をたたいた。が、身体の震えは制御できない。何ともいえない気持ち悪い汗も、額から流れ落ちている。職員たちは、内心の怯えを軽口をたたくことでごまかしているのである。
 戦況は、強力な武器を持つ組織AHO側が、断然優位に立っていた。事実、神通、食毒と言われる餓鬼たちの変わり果てた死体が、辺り一面に累々と積み重なっていく。
 入り口の反対側の壁が崩れ落ちた。餓鬼‘疾行’が、鋼鉄の身体で破壊したのだ。そのままの勢いで組織AHOの職員たちを襲う疾行。二、三人の職員が疾行に押しつぶされた。
「このやろうー」
 職員の一人が、グロップXXXからマグナム弾を、疾行めがけて撃った。マグナム弾の威力に圧倒されて、もんどりうって倒れる。が、直ぐに起き上がってくる。疾行の鋼鉄の身体は、マグナム弾でも損壊しない。
「くそっ、くそっ。くそっ」
 組織AHOの職員たちが、疾行の群れに次々と、マグナム弾を撃ち込む。が、進撃をくい止めることはできても、疾行を倒すことはできない。疾行の後方から、新手の食毒の群れが現れた。食毒の群れが両手を掲げると、数十の氷の剣が食毒の頭の上に現れる。食毒の群れは、おのれの念で宙に出した氷の剣を、組織AHOの連中めがけて投げつけた。二、三の職員が氷の剣を浴び、怪我を負った。が、戦況はいまだに組織AHOの方が優位である。
 食毒の群れの後から、神通の群れが現れた。神通の群れは、身の丈二メートル程の大金槌を振りかざして迫ってくる。組織AHO職員の強力な武器に倒されても、仲間の屍を乗り越えて襲ってくる。痛みを感じない身体は怖れを知らない。
 三匹の疾行が強靭な脚力を駆使して、組織AHOの職員たちが陣取る輪の中に飛び込んだ。三匹の疾行は、筋肉の塊のような脚力を駆使して、数人の職員たちをわずかの間に殺してしまった。
 混乱する組織AHOの職員たち。荻が持ち場を維持するように指示するが、混乱は収まらない。恐怖が勇気を凌駕している。
 組織AHO優位の戦況が、たった三匹の疾行のせいで、崩れたのであった。
「くそっー 怯むな!」
 荻が、組織AHOの職員たちを叱咤する。が、一度崩れてしまった態勢は取り戻せない。荻は焦るが、組織AHOと餓鬼群が双方入り混じった乱戦では、強力な武器であるロケットランチャーは使えない。グロップXXXのみである。接近戦では仲間の死さえもいとわない餓鬼たちの方が、圧倒的に優位なのだ。
《疾行の弱点は、腹にある口です。そこに攻撃を集中させてください》
 荻ら組織AHOの職員の頭の中に、声が響く。
「呂騎だな、那美の相棒の……いま、どこにいる?」
 荻は、辺りを見渡した。
《私はここです。あなたの右前方を見てください》
 見ると、呂騎が数匹の神通相手に善戦していた。
 那美の頼れる相棒、呂騎。頭と胴に青い鋼鉄製の防具を身に着け、果敢に餓鬼群に挑むその姿は、荻たちに希望を与えた。
「那美は? 那美も来ているのか」
 荻が聞く。
《那美さまは、ナギたちを追って地下二階に向かいました》
「ナギというのは? 蒜壷のことか……」
《この研究施設に潜入したAシーリーズの蒜壷は、ナギ、琥耶姫、刻の三名。奴らは伽羅の奪還をもくろんでいます》
「伽羅!? 新宿御苑で俺の部下を皆殺しにしたあの蒜壷か」
 荻は唇を噛みしめた。
 人狼の蒜壷伽羅は、手下の、食風、鑊身、欲食を操り、荻隊長率いる組織AHOの精鋭チームを壊滅させていた。
「地下二階に伽羅はいるんだな」
《捕えられ、クリスタル・ゲージの中に眠っています》
 呂騎が、荻の頭の中にそうテレパシィーを送った。
  

                     = 第六十四回に続く =



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