自作小説

餓鬼狩り (第六十五回)

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                        餓鬼狩り   (第六十五回)

「頭の足りないこいつらでも、陽動作戦ぐらい使えるのよ」
 と、那美が言った。
 疾行、神通、食毒の餓鬼三種のうち、リーダー格でもある疾行は、敵を欺くため、神通、食毒らの餓鬼群を、敵の目前に出し、自らは見えないところから那美たちを襲おうとした。
 が、那美には、通用しない。
 那美は、一匹目の疾行を葬ると、光破剣を自由自在に操り、次々と襲いかかってくる疾行を倒して行く。疾行は、筋肉の塊のような脚で飛び跳ね、那美の背後をつこうとするが、疾行ごときに遅れをとる那美ではない。風のごとく迅速に動き、瞬く間に五匹の疾行を、光破剣で真っ二つに斬り割いた。
「神通という餓鬼は、持っている大金槌を時々投げつけてくるから、それに気をつけて」
 那美が言った直後、二メートルはあると思われる大金槌が三本ほど宙に舞い、野村たちを襲った。野村、室緒、高橋たちがそれをかろうじてよける。
「おい、おいおい。あんなの喰らったらひとたまりもないぞ」
 高橋が、怯える。いや、態度には表さないがそこにいる誰もが怯えていただろう。
 無理もない。大金槌の重量は一トンを超えているだろう。回転しながら宙を飛び、組織AHOの精鋭チームを襲った大金槌は破壊のために生み出されてきただけの怪物のようでもあった。
「食毒の武器は、炎の短剣と氷の短剣よ。食毒の頭上に、剣が出たら。迷わずそれを破壊してください」
 那美が、そう指示を出す。投げつけられた大金槌のもたらした破壊のすさまじさに慄いている野村たちは、那美の言葉に、うなずいた。
 部隊を指揮する野村が言う。
「炎の短剣と氷の短剣!? おいおい、こいつら本当に、Bシリーズの蒜壷かよ。陽動作戦を使ってくる疾行といい、大金槌をぶん回す神通といい、とてもBシリーズの蒜壷たちとは思えねえな」
 そう毒づくた野村に、室緒が、
「野村さんは、身長五十メートルを越す餓鬼と戦ったことがありますか?」
 と、言った。
「身長五十メートルを越す餓鬼!? 食吐のことか……。本部で資料を見せてもらうまで、そんな巨大な餓鬼がいること自体信じることができなかったが、実際の映像を見せられると信じないわけにはいかんな……」
「僕は、あの時味わった恐怖を、一生忘れることができません」
 室緒が、初めて戦った餓鬼は、身長五十メートルを越す巨大な餓鬼‘食吐’だった。食吐を目にして、室緒は何もできなかった。
「おまえたちが、初めて戦った餓鬼が、あの食吐なら、こいつらごときでビビっちゃあ嗤われるな……」 
 野村が自嘲ぎみに言う。
「誰も、野村さんを笑っていませんよ。とにかく今は、目の前の敵を倒すだけです。……こういうふうに」
 室緒のグロップXXXが、飛びかかってきた神通の眉間を撃ち抜いた。餓鬼たちとの戦いに馴れてきたのだろう。室緒は、襲ってくる神通の群れを次々と屍に変えてゆく。高橋も室緒に続くとばかりに散弾銃使用に変えたグロップXXXで、神通の群れを討ち果たしてゆく。
「彼ら、だいぶサマになってきましたね」
 野村の部下が、野村に言った。
「訓練したかいがあるというものだ。おまえも負けるなよ」
「はい」
 野村の率いる精鋭部隊は、少しづつ敵を追いつめて行った。
 神通の群れが大金槌で、室緒たちを翻弄している時、食毒の群れが頭上に両手をあげた。食毒の群れの頭上に炎の短剣が、一匹につき、四、五本現れる。
 那美が叫ぶ。
「光破剣、円風斬!」
 那美は宙に跳び、光破剣を水平に振った。光破剣の刃先からブーメランにも似た光の刃(やいば)が次々と現れ、宙に浮かんでいる食毒の炎の短剣を粉砕してゆく。
「ぼやぼやしない。いまよ、食毒を倒して」
 野村、室緒らは那美の指示を受け、グロップXXXの弾丸を食毒の群れに対して、ぶっぱなした。
 脳漿を飛び散らして息絶える食毒。胸の野球ボール大の風穴をあけられて崩れ落ちる食毒。脇腹を半分ほど、グロップXXXの弾丸にえぐられて内臓を飛び散らす食毒……。
 食毒の群れは命の灯を消され溶け出してゆく。
「食毒はね、連続して、宙に短剣を造り出すことはできないの」
 那美が、疾行を斬り伏せながら言う。
「だから、短剣を造り出した時がチャンス」
 那美の光破剣が、また一匹、疾行を斬り伏せる。
「那美さん、神通、食毒らは、俺らでも倒せるが、あの疾行だけは……」
 と、言う野村。
 事実、野村たちは疾行に苦戦していた。二、三人の仲間が疾行の手によって倒されている。
「疾行の身体の硬さ鋼鉄なみ。大地のヌなみだわ」
「我々の武器では倒せないというのですか?」
「倒せる。疾行の弱点は、腹にある大きな口。そこを重点的に攻めて」
「やってみましよう」
 野村の指示に、室緒たちは各々が持つ銃器のセンサー・サイト(識別照準器)のハッチをあげた。狙いを疾行の腹に合わせる。
疾行の群れが野村らの意図を感じ取った。疾行は逃走を図ろうとする。疾行の群れに、銃弾の雨が降り注いだ。銃弾の雨は、逃げる疾行の位置を予測していてかのように、腹にある口に吸いこまれるように命中していった。
「やるじゃない」
 那美は、右手の親指を立てた。
「ここは俺たちに任せて、那美さんは地下二階に急いでください!」
 と、野村が言う。
「わかったわ。ここはたのむからね」
 那美は、群がる餓鬼群を斬り割きながら、下に降りて行った。


                     = 第六十六回へ続く =







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