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自作小説

餓鬼狩り (第六十八回)

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                      餓鬼狩り   (第六十八回)
 

 自分が自分でなくなる感覚……。
 関川は、薄れてゆく意識の中で、かつて一度だけやったことのあるドラック“メタンフェタミン”服用直後の感覚を思い出していた。若い頃研究に集中するために使った“メタンフェタミン”。あの高揚感が、自分を支配しようとしている。過信ともいえる尊大な高揚感が動悸となって胸を打ち、目眩とともに、多幸感がおのれの精神を縛り上げてゆく……。
 関川は、白目をむいて痙攣した。
 関川を縛っていたチューブが解けた。床に寝転がっていた関川は、ゆっくりと頭を左右に動かした。やがて起き上がり、ナギの目の前に立った。
「記録媒体は USBか……。さあ、伽羅から得た情報を、僕たちに渡して」
 ナギが関川の思考を読み取る。関川はふらふらと歩いてゆき、壁にはめ込まれている金庫の前で立ち止まった。ボタンを押す。金庫の前面にある小さな扉が飛び出した。関川は扉の中にある指静脈認証装置に、右手の人差し指を認証させた後、胸元のポケットからカードを取り出した。カードリーダーに、それをスライドさせる。ホイッスルのような音が短く響いて、金庫の施錠が解除された。
 関川は、金庫の扉を開けて、中から金属製の小箱を取り出した。それを、ナギに手渡す。
「ソノナカニ、ハイッテイルノカ?」
 刻が、ナギの肩に留まった。
「さあ、ここから脱出しよう。伽羅も無事奪還できたし、ここにこれ以上いる意味はない」
 と、ナギが言う。
「ナギさま、那美はどうするのですか?」
 琥耶姫が問う。
「ふん、あんな姉のことよりも、これを解析する方が大事だ。姉など、いつでも始末できる」
 ナギは、蒜壺一族の身体の秘密について知りたかった。
 蒜壺一族の身体の秘密を探れば、蒜壺一族と人との間に生まれた自分の身に、隠されている謎の部分が解明できるかもしれない。
「その箱の中に、わらわたちの秘密が隠されているのじゃな?」
 琥耶姫が、ナギに問う。
「わからないよ」
「わからないと?」
 人類誕生のその時から、長きにわたって闇の世界で生き続けている蒜壺一族。その一族の謎を解き明かしたものはいない……。
「琥耶姫、伽羅、僕の身体に摑まって。刻は……」
 鴉の蒜壺、刻はナギの言葉を終わらないうちにナギの肩に脚を降ろした。爪でしっかりとナギの肩を掴む。
「少し気持ち悪くなるけど、我慢しろよ」
「あれを、使うのじゃな」
 琥耶姫が、ナギの身体にしがみついた。伽羅が琥耶姫の腕を掴む。
 超絶サイキッカーであるナギは、一瞬にして、いまいる地点から、定められた地点に移動できる能力を備えていた。いわゆるテレポーションという能力だが、ナギの場合、移動距離は限られており、かつ、一度その場に行き、認識した地点じゃなければ、瞬間移動という離れ技を成しえることはできない。
 ナギの瞳がオレンジ色に光った。
 時間にして、わずか三分。ナギ、琥耶姫、刻、伽羅は組織AHO研究施設の屋上にいた。
「帰るよ、極異界に」
 ナギが言う。
「戻るのかい……」
 伽羅が、自分に言い聞かせるように言った。
「一度、帰ってから出直しさ」
 極異界には、ナギ専用の実験室があった。ナギはそこで関川から奪った蒜壺一族のデーターを解析するつもりだった。
「ナギ! なにをたくらんでいるの」
 ナギたちの前に、那美と呂騎が現れた。
「なぜ、ここに?……奥津鏡!? 奥津鏡を使ったな」
 ナギが那美に問う。
「そうよ。なぜ、あなたが私を避けて、施設に現れ、伽羅の奪還を図ったのか……。推測すれば、私を討とうとしてここに来たわけではないと判断できるわよね」
 組織AHOの研究施設があるN島で、那美と呂騎を、要撃したのは風のイ、大地のヌと、彼らが率いる食法だった。ナギ、刻、琥耶姫は別行動をとっていた。
 なぜ、別行動をとる必要がある?
 不審に思った那美は、風のイ、大地のヌを葬り去った後、奥津鏡を使い、ナギの動向を探っていた。那美は、地下二階にいると思われるナギのもとに向かう途中、ナギのテレポーションの波動を、奥津鏡から受け取り、神通、食毒、疾行らの餓鬼を駆除した呂騎とともに屋上に現れたのであった。


                        = 第六十九回に続く =




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