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自作小説

餓鬼狩り (第七十一回)

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                      餓鬼狩り   (第七十一回)

「あまり、彼女を怒らせるなよ」
 伽羅が言った。
「姉さんは、怒っているふりをしているだけだよ。そう思うだろう?」 
 ナギが、琥耶姫に問う。
「われも、そう思う。なにがあっても、冷静にして沈着。那美はそんな女だ」
 琥耶姫が答えた。
「アノイヌ、ウナッテイル。ウナッテイル」
 隻眼の鴉、刻が呂騎に目を向ける。
 那美の相棒である呂騎は、那美の傍らにいて、ナギたち三人を警戒していた。
「姉さん、ここは黙って見逃してくれないかな。姉さんと争って、せっかくの資料がだいなしにでもなったら、ここに来た意味がなくなってしまうよ」
 ナギは、ポケットに忍ばせているUSBメモリーを気遣った。
 USBメモリーには、組織AHOが伽羅の身体を調べ上げて得た、蒜壺の身体の秘密が記録されている。最先端の科学技術でも蒜壺一族の身体に秘められた謎は、解明こそできなかったが、解き明かした身体の秘密の一端は、蒜壺の者にとって光明を与える一筋の光になるかもしれない。
 一度、閉じていた天空に開けられた極異界と現世を繫ぐ孔が、はらわたに響くような重低音とともに広がってゆく。温度が急激に下がった。孔の中には幾筋もの雷鳴が鳴っている。
「この研究施設の上空に、極異界と現世を繫ぐ孔があるなんて……、偶然にしてはできすぎね」
 那美が言った。
「偶然ではないさ。馬鹿な人間たちが、この島に起きる異常な現象を重く見て、この施設を造ったんだろう」 
 ナギが答える。
 組織AHOが、N島に研究施設を造ったのには理由があった。
 N島は、昔から異常気象が頻繁に起きる地帯として有名なところだった。蒜壺一族らしき怪物の姿もたびたび目撃された。組織AHOは、その謎を解くために、このN島に研究施設を建設したのだが、このN島が、蒜壺一族の間でオノゴロ島と呼ばれ、現世と極異界とを結ぶ最大の孔があることは知らなかった。
「てめえら、このまま帰れるとでも思っているのか」
 荻隊長が、数名の所員を連れて屋上に姿を現した。手にした重火器で、ナギたちを威嚇する。
「おや? 惟三の幻惑に惑わされて、部下をその手で殺した男か? ……ここに来て、なにをほざいているのやら」
 伽羅が言った。
「言うな!」
 新宿御苑の戦いで、荻隊長は償うことができない罪を負ってしまった。みずからの手で手塩に育て上げてきた部下を、葬ったのであった。
「伽羅、おまえだけは生きて帰さん。この手でぶっ殺してやる!」
 荻隊長が、伽羅に重火器を向けた。
「じきに、野村たちもここにやってくる。覚悟するんだな」
 野村隊長率いる組織AHOの精鋭部隊は、組織AHO研究施設内で暴れまわった餓鬼の一群、疾行、神痛、食毒らを駆逐して、すでに最上階まで来ていた。
 那美と呂騎。荻隊長と強力な武器を装備した組織AHOの所員。これに野村隊長の率いる精鋭部隊が加わることになる。
 荻隊長の重火器が火を噴いた。荻隊長に続き所員たちもそれぞれ持つ武器を、ナギたちに向けて乱射した。
 が、荻隊長の火炎放射も所員たちの銃弾も、ナギたちには届かない。ナギが防護壁を自分たちの周りに張り巡らせているのだ。
「どいてて、いまこの壁をぶった切るから」
 那美が言った。
「姉さん、あまり無理しないほうがいいんじゃあない? 体力的にもきついだろう」
 ナギが言う。
「それはあなたに言う言葉よ。あなたのサイコキネシスだって、無限に使えるものじゃあないでしょう。ここまで来るのに相当なエネルギーをつかっているはず」
 那美が答えた。
「やれやれ、どうしてもやるって言うんだね……。伽羅、回復したかい。バリアーを外したら俊敏に動けるかい?」
「完全だとは言えないが、もう大丈夫だ」
 伽羅が答える。
「わらわの快治丹が効いたのじゃ」
 琥耶姫が、口元をほこらばせた。
「キイタ、キイタ、クヤヒノ、カイジタンガキイタ」
 刻が、琥耶姫の言葉を繰り返した。
「伽羅、琥耶姫と刻を頼むよ。バリアーを外したら、そこの浄化槽の陰に隠れるんだ」
 ナギの指示に、伽羅は無言でうなずいた。
「姉さん。覚悟はできているかい?」
「それは、こっちのセリフよ」
 那美は跳んだ。空中で光破剣を大上段に構えなおし、そのままナギに向って振り下ろす。
 ガラスが割れるような音とともに、ナギの張り巡らしたバリアーが弾け飛ぶ。

    
             = 第七十二回に続く =

PS、第三十一回釜石市民劇場「心に翼を、希望を胸に ~てんやわんやケアハウス」の本番に向けての稽古が開始しました。
キャスト、スタップがそろっていない状態での発進です。皆様方のお力添えをよろしくお願いします。




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