自作小説

餓鬼狩り (第七十二回)

 ←ポスターの完成 ~心に翼を、希望を胸に 
                       餓鬼狩り   (第七十二回)


「光破剣の威力は絶大だねえ~ 琥耶姫、刻、伽羅、ぼやぼやしないで極異界にお帰り」
 ナギが言った。
「それじゃあ、先に帰らせてもらうよ。なにしろ身体が、まだ完全ではないんでね。那美と戦うには、ちょいときつい」
 伽羅がそういう。
「わらわも、極異界に帰る。刻、一緒においで」
 琥耶姫の肩に鴉の蒜壺、刻が留まった。
「逃がすものか!」
 荻隊長が、重火器を構え直した。
「そんなもんで、僕たちは倒せないよ。おまえらは、そこでコンクリートでも舐めていれば」
 ナギの瞳が怪しく光った。気合とともにナギが両手を交差させる。
「なんだ、どうした? 身体が……」
 荻隊長とともに、屋上に駆け付けた研究所の職員が何者かにおさえつけられたように、うつぶせに地面に押しつぶされた。身動きができないのであろうか、ぴくぴくと体を痙攣させているその姿は、踏み潰された瀕死のダンゴ虫がもがいているようにも見えた。
 ナギは交差させていた両手を解き、両手を合掌し、胸の前に突き出した。合掌した手から青色の光の剣が上下に飛び出す。
「この剣、光双剣(こうそうけん)とでも呼べばいいのかな。姉さん、ゆくよ」
 ナギは、右手に光双剣を持ち変え、那美に立ち向かった。
 那美の十種神宝、足玉の勾玉が那美の胸で藤色に光った。那美は空中高く飛んだ。
「空中戦かい……、望むところだ」
 ナギが那美を追った。
 那美の光破剣が、ナギの光双剣を向かい打つ。空中で二つの剣が激しく火花を散らした。どちらも一歩も引かない。那美が俊敏に光破剣を繰り出さば、ナギも負けじと光双剣でそれを跳ね返した。
 ナギが言う。
「やるね、姉さん。昔とは違うな」
 鍔迫り合いの中、那美がナギに言い返す。
「あなた、なぜ気付かないの? 人を犠牲にしていては、蒜壺一族に未来はないと」
 那美は、ナギの光双剣を押し返した。
「姉さん、何度も言わせるなよ。人は蒜壺にとっては家畜。家畜は食べ物。食べ物に尊厳などない。尊厳のないものに犠牲の意味を問うとは、……笑わせるなよ」
「じゃあ、蒜壺に尊厳があるとでもいうの? 仲間同士で争い、時には殺しあってる蒜壺に……」
「争い続けているのは人も同じじゃあないか。お互いを信じることができず傷付けあっている。傷付き、憎み、殺しあっているだろう……。歴史がそれを証明しているよ。蒜壺は争いはするが、何百万人が亡くなる戦争などという愚かな行為をしたことがない。何百万人が亡くなった戦争を起こしたのは人間だけさ」
 人は、争うことでしかその道程を歩めなかったのだろうか。 
 他人への嫉妬、妬み、憎しみは、人から優しさを奪い、嘘や虚偽で相手を混乱させる。おのれの欲望を満たすために、良心を忘れた人たちは、利害を追求し、他人の財産を食いつぶしては、おのれを太らせる。 
 土地の所有権で殺し合い、宗教上の習慣の違いで他人を陥れ、肌の色が違うだけで奴隷としてこき使っては、死に追いやってきた人間たち。第一次世界大戦、第二次世界大戦、人は二つの大きな大戦を経験して、いったいなにを学んだのだろうか?
 いまでも、地球上では紛争ののろしが上がり続けている……。 
「それでも、人には生きとし生けるものを愛(め)でる優しさがあるのよ」
 と、那美が言う。
「へぇ~ いまだに地球を何十回も滅亡させることができる核爆弾を、何十発も持っているくせにかい」
 ナギは、那美から三メートルほど離れて、間合いをとった。
「姉さん、早く気づけよ。人の優しさはすべて偽善から成り立っていることを」
「偽善!? 人は偽善者ばかりではないわ。あなたは、オババの優しさを忘れたの? オババは、私たちの中に蒜壺の血が流れていることを承知で、私たちを可愛がってくれたのよ」
「それは、オババもまた僕たちと同じ人の血が交じった蒜壺の者だったからだろう。同族だから僕たちを愛してくれたんだよ。同じ血を持つ者としてね」
「いいえ違うわ。オババは蒜壺の者というよりも、人に近かった。人として私たちを愛してくれた。だから私たちと一緒に、人里でも暮らせたのよ。あなたにはそれがわからないの」
「わからないね」
 那美とナギは幼少時、蒜壺の者が迎えに来るまで、オババと一緒に人里に住んでいた。蒜壺一族現当主“洪暫”の監視付きだったが、那美とナギはオババからその秘密を知らされるまで、人として生きてきた。
「あの頃、私たちは幸せを感じて生きてきた」
 那美たちの周りの人たちは、みな那美たちに優しかった。豊かではない村だったが、人々は互いに助け合い生きてきた。
「幸せ? 姉さんは、忘れたのかい。僕らが普通の子供では違うことを知った時、あいつらは僕らに冷たい目を向けたじゃあないか」
 十を数える歳になった那美とナギは、異常な能力を周りの人たちに、見せるようになった。大きな岩を手を使わずに動かしてみたり、人の心の中を言い当ててみたり……。
 村人たちは、初めはただ驚いていただけだったが、しだいに那美とナギに怖れと敵意の目を向けるようになっていった。
「人というものは、優しそうに見えても、一皮むけば、自分のことしか考えることができない生き物なのさ。いうなれば欺瞞。僕たちは、欺瞞の中で幸せを感じていたんだよ」
「欺瞞!?」
「ああっ、欺瞞さ。そうだろう。村人と仲良くやっていたオババだって、僕たちの目を盗んで、時々、人の肉を食べていたんだぜ。みんなと仲良くしなさいと言っていたオババがな」
「いうな!」
 那美は光破剣を水平に振った。光破剣の刀身から、次々とブーメラン状の光の刃が飛びだした。ナギがそのブーメラン状の光の刃を、光双剣ではじき返す。 はじき返されたブーメラン状の光の刃は、四方八方に飛び散った。ナギが左手の掌を突き出す。左手の掌から衝撃波が、那美に向って放たれる。那美は光破剣で、その衝撃波を受け流した。那美は衝撃波を受け流した後、再び、光破剣からブーメラン状の光の刃が放った。ナギは頭上高く跳んで、光の刃を交わし、那美に向って、衝撃波を上空から浴びせ、衝撃波を放った後、那美の右方向に回り、光双剣で、那美を襲った。那美は束ねた髪の毛の一端を、光双剣で斬られはしたが、かろうじてナギの光双剣を交わした。
「姉さん、こういうのはどうかな?」
 ナギが、左手の掌をコンクリートの地面の上にはいつくばっている荻隊長らに向けた。荻隊長らを衝撃波で殺そうとしているのだ。
 その刹那、那美の相棒の呂騎が、荻隊長の背中に飛び乗った。呂騎の額に白緑色(ひゃくろくいろ)の勾玉と、紅梅色(こうばいしょく)の勾玉がはめ込められてあった。呂騎がうなり声をあげると、その勾玉が光った。


                    = 第七十三回に続く =


PS、言い訳ですが、市民劇場の方が忙しくなり、餓鬼狩り(第七十二回)から、だいぶ間が空いてしまいました。反省します。
市民劇場の方は、地元の釜石復興新聞に「心に翼を、希望を胸に ~てんやわんやケアハウス」のチラシが入りました。よろしくお願いします!




にほんブログ村

 

スポンサーサイト


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 自作小説
もくじ  3kaku_s_L.png 市民劇場 裏話
もくじ  3kaku_s_L.png 命の輝き
もくじ  3kaku_s_L.png 映画鑑賞記
  • 【ポスターの完成 ~心に翼を、希望を胸に】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【ポスターの完成 ~心に翼を、希望を胸に】へ