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自作小説

餓鬼狩り (第七十三回)

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                        餓鬼狩り  (第七十三回)

 ナギの放った衝撃波が撥ね返された。
「僕の衝撃波が、呂騎ごときに撥ね返されるとは……」
 ナギは、呂騎の額に輝く二つの勾玉に気づいた。
「もしかして、その勾玉……。それが十種神宝なのか。白緑色に光っているのは蜂比礼(はちのひれ)、紅梅色(こうばいしょく)に光っているのは品物比礼(くさぐさのもののひれ)。そうだろう。そうなんだろう。惟三から情報が入っているよ」
 ヒキガエルの姿の蒜壺、惟三は、卑眼の惟三とも呼ばれ、その卑眼を使って、那美の香り袋の中にある十個の勾玉の秘密を暴いていた。古から伝えられてきた十種神宝は形を変え、勾玉の中に存在していたのである。
 十種神宝の力を持つ勾玉は、普段、香り袋の中に収められている。十の勾玉は、色彩によって判別できるようになっていて、光破剣となる勾玉は鴇色(ときいろ)であり、辺津鏡となる勾玉は鳥子の色(とりこのいろ)。奥津鏡となる紅緑色(べにみどりいろ)の勾玉。緋色(あけいろ)の勾玉は、生玉という十種神宝となり、青藤色(あおふじいろ)の勾玉は、足玉(たるたま)という十種神宝なる。伽羅の動きを封じ込めた道反玉(ちがえしのたま)は、藤色(ふじいろ)の勾玉。蛇比礼(へみのひれ)と呼ばれる十種神宝は、藍鼠色(あいねずいろ)の勾玉であり、蜂比礼(はちのひれ)という十種神宝は、白緑色(びゃくろくいろ)の勾玉。すべての邪悪なものを払う品物比礼(くさぐさのもののひれ)は、紅梅色(こうばいしょく)の勾玉で、空色(そらいろ)の勾玉は、那美が、まだ一度も使ったことがない禁断の勾玉、死反玉(まかるがえしのたま)である。
 那美の相棒でもある呂騎は、那美から、空からの攻撃に対しての迎撃用の十種神宝、蜂比礼と、すべての者の邪を払う十種神宝、品物比礼を、借り受けていたのであった。
「姉さん、防御用の十種神宝を、その身から外してもいいのかい。光破剣ひとつで、僕の攻撃から身を守れるのかい?」
「私は、ひとりじゃあないわ」
 と、那美が言う。那美の視線の先には呂騎がいた。
「呂騎かい……。姉さんの傍には、餌非一派の犬っころが、一匹いるだけじゃあないか。呂騎など、すぐに葬ってやるよ。その犬っころが、いなくなれば、姉さんはひとりさ」
 ナギは光双剣を光らせた。
「いいや、那美さんは、ひとりじゃあない」
 そう応えたのは、野村隊長だった。野村隊長の周りには屈強な男たちもいる。野村隊長率いる組織AHOの精鋭部隊が、いま屋上にたどり着いたのだった。
「那美さん、安心してください。もう、そいつには好きなようにはさせません」
 野村の傍らにいた室緒が言った。室緒の傍らのには、彼の部下だった高橋の姿も見える。
 ナギが言う。
「人間ごときが……。数が増えればいいってこともなかろう。おまえらごときが、いくら増えても同じことさ。そこにはいつくばっている奴らと同じような目に遭うだけ」
 荻隊長と行動を共にした男たちは、いまだにコンクリートの地面の上ではいつくばっている。身動きができない身体で、いつ殺(や)られるかもしれない恐怖に怯えているのだ。
「そんなことはさせない!」
 那美は、光破剣を大上段に構えた。光破剣が金色に輝き、光破剣の周辺に天使の輪のような光の輪が七つほど現れた。
「この光の輪は、強烈な力で敵を切り刻む。いくらあなたでもはじき返すことなんか、できやしない」
 那美は、大上段に構えた光破剣を振り下ろした。七つの光の輪がうなりをあげて、ナギに襲いかかる。
「ふん」
 ナギは鼻を鳴らした。ナギがその場から消えた。七つの光の輪は、ナギを見失った。
「瞬間移動ね……。ナギ、私もそれくらいできるわよ」
 那美も、また消えた。那美の消えた場所にナギが現れ、光双剣を振り下ろした。光双剣は空を切り、ナギは目を見開いた。
「まさか!?」
 ナギは、姉である那美が瞬間移動能力を身につけていたとは思ってもいなかった。狼狽しながら、辺りを見渡した。戸惑うナギの前に那美が現れ、光破剣でナギを横に払おうとする。間一髪、ナギが光双剣で那美の奇襲を防いだ。光破剣と光双剣が火花を散らした直後、ナギが消え、那美も、ナギを追って消えた。元居た場所から二十メートルほど離れた地点にナギが、現れると、那美が出現し、光破剣でナギに襲いかかる。
「おのれっ~」
 ナギは、光双剣で光破剣を押し返した。そのまま瞬間移動をして、野村隊長らの前に現れる。ナギは、先に野村達から葬り去り、那美を窮地にたたせようとしたのだ。が、ナギの行動をあらかじめ知っていたのか、那美が先手をうって、野村達の前に天使の輪のような光の輪を張り巡らせていた。野村達を守っていた七つの光の輪のうち、三つの輪がナギに襲いかかる。那美の光の輪が、ナギを真っ二つにしようとしていた。
「ナギさま~」
 琥耶姫が、ナギの身体を押しのけた。光の輪が、琥耶姫の腹部を抉る。琥耶姫は、口から血を吐き、崩れ落ちた。
「琥耶姫!」 
 ナギは叫びながら、残る二つの光の輪を瞬間移動で交わした。那美が傷つき息も絶え絶えになっている琥耶姫の前に現れる。
「琥耶姫……。まだ、帰っていなかったのね」
 那美は、ひざまずき、琥耶姫を抱いた。
「おまえに、一太刀も浴びせずに、おめおめと極異界に帰れるか……、せめて、一太刀……せめて一太刀でも」
 琥耶姫は、血に染まった腹部を片手で押さえながら言った。もどかしそうに右手を挙げる。右手の甲からのこぎり状の刃が出で来る。琥耶姫は、それを那美に突き付けた。那美は、突き付けられたのこぎり状の刃を優しく手に取り、それを静かに琥耶姫の胸元に戻してあげた。
「琥耶姫……。もう戦う必要はないわ」
 那美は、琥耶姫に死が訪れることを悟っていた。
「わらわは、死ぬのか……」
 琥耶姫が言う。
 那美は、無言でうなずいた。
「そうか……。死ぬのか」
 琥耶姫の瞳から一筋の涙が零れ落ちた。
「那美、ひとつ聞くが、わらわはきれいか……」
「えっ?」
「わらわは、きれいかと聞いておる。……わらははきれいか?」
 トカゲ顔で全身青いうろこで覆われた琥耶姫は、人に化身できない自分の身を愁いで、人に化身できる化瑠魂を作りだした。
「きれいよ……。とってもきれい。可憐な花のようにきれいよ」
「そうか……。われは、そんなにきれいか……」
 琥耶姫は、すがるような瞳で那美を見た。那美の瞳には優しい光が満ちている。
「ええっ、とてもきれいよ」
「……血とともに化瑠魂のエキスは流れてゆく。化瑠魂がわらわを人間体にしておく時は、残りわずかじゃ。那美、わらわはの命が燃え尽きるまえに、光破剣でとどめを刺してくれ。きれいなままで死にたい……。トカゲ顔の醜い姿で死にとうない……」
 琥耶姫の脳裏に、美しい母の面影が蘇った。蒜壺一族なのに人間体であった母。同じ人間体であった父と結ばれ、わらわは生まれた……。
 わらわは、醜くかった。青いうろこ状の身体と猫のような瞳は、化け物そのものだった。それでも、父と母はわらわを愛してくれた。醜くおぞましいわらわを……。
「那美、わらわにとどめを……。きれいな顔のままで死にたい。醜いトカゲ顔に戻りとうない……」
「琥耶姫……」
 那美は、琥耶姫の胸に光破剣を突き立てた。


                 = 第七十四回へ続く =


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P,S  おかげさまで、第三十一回「釜石市民劇場「心に翼を、希望を胸に ~てんやわんやケアハウス」が、無事に終了しました。
    たくさんのご来場、ありがとうございました。


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