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自作小説

餓鬼狩り (第七十四回)

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                     餓鬼狩り   (第七十四回)

 琥耶姫を葬った那美に,隙が生じた。すかさず、ナギが、那美に向って衝撃波を放つ。那美は交わしきれず、ナギの放った衝撃波をくらった。もんどりうって倒れる那美。ナギが光双剣を宙に放り、両手で丸い輪を作ると、那美の胸元から香り袋が飛び出た。ナギがアポート(物体引き寄せ)を使い、那美から十種神宝が入った香り袋を奪おうとしているのだ。
 呂騎が跳んだ。跳んで、香り袋をナギに奪われないように、ナギと香り袋の間に入り込んだ。
「おのれ!」
 ナギは宙に浮かせてあった光双剣で、呂騎を斬りつけた。よほど慌てていたのだろう。ナギは呂騎を斬りつけたつもりだったが、光双剣は香り袋を切り裂いてしまった。切り裂かれた香り袋から、現在(いま)那美と呂騎が使っていない勾玉があふれ出る。
 ナギは、慌てて宙に飛び散った勾玉を回収しようとした。が、宙に飛び散った勾玉を、回収しようとしたのはナギだけではなかった。呂騎もまた散らばった勾玉を回収しようとした。ナギの衝撃波をくらい、倒れていた那美も、たちあがり、散らばった勾玉の元の走る。
 現在(いま)、那美たちが使用している十種神宝は、光破剣、蜂比礼、品物比礼である。宙を駆け回るために足玉も使用していたが、足玉は香り袋の中にいれたまま使用していたので、いまは手元にない……。
 那美と呂騎は、散らばった七つの勾玉のうち四つの勾玉を回収することができた。残り三つ。空色の勾玉と紅緑色の勾玉、藤色の勾玉が、ナギの手に落ちた。
 ナギが那美から奪った勾玉のうち、紅梅色の勾玉は、奥津鏡という十種神宝である。これを奪われると、蒜壺一族がどこに現れたのか探知しににくなる。藤色の勾玉は、俊敏な動きで走る伽羅の動きを封じ込めた道反玉と呼ばれる十種神宝である。空色の勾玉は、禁断の十種神宝、死反玉である。一説によると死反玉は、死者を蘇らせるという。
 呂騎がテレパシーを那美に送る。
《那美さま……。三つの十種神宝がナギに奪われてしまいました》
「奪われたら、奪い返すだけよ」
 那美は、ナギを睨んだ。
「僕から、これを奪えると思うのかい? 姉さん」
 ナギは不敵に笑った。
「返してほしいなら、極異界まで取りにおいでよ」
「逃げるのね」
 と、那美が言う。
「逃げる!? 僕が? なんで、僕が逃げなくちゃならない? この場から逃げ出したいのは姉さんだろう。立っているのもやっとなくせに……」
 那美と呂騎は、N島に着いてから、休む間もなく戦い続けてきた。毒虫を操る食法と戦い、風を自由自在に動かす風のイ、大地を砕く大地のヌを葬り、組織AHOの研究施設の中に入ってからは、疾行、神通、食毒らの餓鬼群と戦ってきた。餓鬼群を組織AHOの室尾たちと壊滅させたあと、待っていたのは、最強の戦士ナギとの戦いであった。
 度重なる戦闘によって、那美の体力は、限界にきていたのである。
 那美が言う。
「立っているのもやっとなのは、あなたも同じこと……。ナギ、あなたの体力とて、無尽蔵じゃあないでしょう。脚がふらついているわ」
 那美と同じように、人と蒜壺との間に生まれたナギもまた、体力の限界に来ていた。
「あなたの超能力……。そのなかでも瞬間移動能力は、著しく体力を消耗するはずよ」
 那美とナギは、前に一度、戦ったことがあった。ナギが勝利をおさめ、那美は敗退し、かろうじて逃げることができた。その戦いで、那美は、ナギが瞬間移動能力を使うと、極端に体力を消耗させることを知ったのであった。
「極異界に帰るくらいの体力は残っているさ」
 組織AHOの上空に開いた極異界の入口は、逃亡しようとしているナギを、歓迎するかのように雷鳴を響かせていた。
「伽羅、そこにいるんだろう」
 そう、ナギが言うと、浄化槽の陰から伽羅が出てきた。ナギが上空から降下し、伽羅の肩を抱き、再び宙に舞い戻った。宙に舞い戻ったナギと伽羅は、極異界の入口に向って上昇してゆく。
「逃がすものか!」
 那美が、ナギたちを追おうとした。
《無茶です、いけません、那美さま。その体で敵の本拠地である極異界にのりこむつもりですか》
 呂騎が、那美の裾にくらいついて那美を止めた。
「止めないで、放してよ、呂騎! 十種神宝が奪われたのよ」
《奪われたら、奪い返したらいいだけのこと》
「そんなのんきなことは、言っていられないわ。十種神宝が悪用されたら……。十種神宝のために犠牲者がでたら……」
 那美は、人を助けるために十種神宝を使い続けてきた。が、巨大な力を秘めた十種神宝は、使うものによって、人とその周辺に壊滅的な破壊をもたらす。
《那美さま、死ぬつもりですか。いまナギたちを追うということは、死ににゆくようなもの》
 呂騎は、那美の裾を引っ張るのを止めて、那美の前に立った。那美は、瞳から大粒の涙を流している呂騎の姿をそこに見た。
《死んではいけません、那美さま。死んではいけません。那美さまが死んでしまったら、誰が、蒜壺一族から人間を守るのです。誰が……一体誰が、誰が、人を……人を守るのですか》
「呂騎……」
《那美さまは、希望なのです。人と……。そして、われわれ餌非一派の》
 蒜壺一族の中で、餌非一派は、常に人とともに生きようと努力してきた。人肉を食べなければ七日目には気が狂ってしまうという呪いと戦い続けながら……。
 組織AHOの研究施設の上空に開いた極異界への入口が、一つの劇の終演を告げるように閉じてゆく。東の空に陽が昇り始め、やわらかい風が、辺りを彷徨い、小鳥たちのさえずりが聞こえてきた。
「わかった……。ひとまず引き返そう」
 那美は、自分に言い聞かせるように言った。


              = 第二部、第一回へ続く =
 

PS、明けましておめでとうございます。またまた、前回からずいぶん空いてしまいました。
   待っていただいていたみなさん、ごめんなさい(待っている人、いるのかな?)
   餓鬼狩りは、次回から第二部になります。楽しみにしてね!


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