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自作小説

餓鬼狩り 第二部 (第七回)

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              餓鬼狩り  第二部 (第七回)


  数少ない水源から湧き出たものが、清冽な輝きを反射させながら、川底に転がる小石を撫でるように流れていた。川底は浅いが、所々に窪みがあり、その窪みのせいで小さな渦が、川面に数ヵ所あった。
  傍らの朽ちた大木の下に、大岩を思わせる猛牛の姿をした蒜壺の死体があった。猛牛の姿をした蒜壺の死体に、餓鬼“羅刹”が、数匹、食らいついていた。 
 人間界から極異界に帰ってきたナギは、愛でていた紫色の花を、川面に投げ捨てた。紫色の花は、奔流に身を任せながら舞うように流れて行く。
 この紫の花のように、蒜壺もまた、時の流れに翻弄されてきた……。
 時の流れに翻弄されてきたのは、蒜壺だけではないにしろ、なぜに蒜壺は闇にその身を置かなければならない存在になったのだろう。
 蒜壺一族は、千寿に呪いをかけられる前は、日中でも活動できた。人里離れた森の中に居住し、血に飢えると、里に下り、人を襲い、人肉を食らってきた。鵺とか、鬼とか、妖怪などと人に言われ、恐れられていた。
 蒜壺一族は、数こそ少ないが、人の上に君臨し、我が物顔で、世を陰から支配していたのだ。
 千寿が、すべてを変えた。人の上に立てなくなった。千寿の呪いのため、活動が制限され、夜の世界の住人になってしまった。
 本当に、千寿だけのせいだけなのだろうか?
 奇怪な姿で生まれ落ち、醜悪ともいえる性(さが)が、そうさせたのではあるまいか……。
 闇の世界に追われた蒜壺一族は、自らの性も顧みずに、現界と異界との扉を開くことのできる洪暫に、望みを託した。
 洪暫は、一族の期待を裏切らなかった。
 幽現界、幽界、霊界と様々な異界の扉を開け続けた。十三日目にして、蒜壺一族が住まうべき場所、極異界を探し当てた。
 極異界は、霊界、幽界、幽現界とは似たところもあれば、まったく違うところもあった。
 陽はないが、闇の世界ではない。絶えず薄暗いが、光りはある。もちろん陽の光ではない。光の元が何なのか分からない。それは蛍などの蛍光虫が発する光にも似ていた。ほにかに明るいが、暖かさがない光り。その光りの中で、強いものが生き残り、弱いものは死に絶える。
 川面を流れていった紫の花も、命の力に溢れていたのだろう。摘み取られれば死に絶える存在だが、無情の荒野で咲き誇っていた。死体になる前は、おそらく猛々しかったはずの猛牛の姿をした蒜壺は、無残にその骸をさらしているが、可憐で、か弱い存在だったはずの紫の花は、綺麗なまま。流れていった……。
 つくづく極異界というところは、奇々怪々な世界だと、ナギは流れて行った紫色の花を愛でながら感じた。
 空に隻眼の鴉、刻の姿があった。
 刻は、川辺のほとりに佇むナギを見つけると、羽をひるがえした。一直線に降りてきてナギの肩に止まる。
「ナギ、コウザンガ、ココニクル」
 と、刻が言う。
 ナギは、あえて応えなかった。肩にとまった刻に目もくれない。
「コウザンガ、クルヨ、ナギ」
 刻は繰り返していった。
「分かっているよ。そろそろ来る頃だろうと思っていたところだ」
 極異界に戻って来てから、十日経っている。
 ナギは、度々の呼び出しにもかかわらず、洪暫のもとに、はせ参じることがなかった。ナギが洪暫のもとに行かなければ、洪暫が、ナギのもとにやってくるのは、分かっていたことだ。
 ナギは、洪暫が欲している十種神宝の神宝のうち、三つの神宝を所持しているのだ。
(これの謎が解ければ、蒜壺一族にかけられた二つの呪いが消えるか…)
 人と、蒜壺一族との間に生まれ落ちたナギは、日中でも活動ができ、人肉を食らうことがなくても、狂い死ぬということはない。人は嫌いだが、蒜壺一族にそれほど親愛の情を寄せているわけでもない。ただ、退屈しのぎに、蒜壺一族に加担しているだけのことだ……。
 ナギは、くっくっっくと忍び笑いを漏らした。
「惟三、そこにいるんだろう?」
 ナギは、目の前の大岩に声をかけた。
「あいやー ばれてしもうたやが。ナギさんにはかないまへんわー」
 惟三が。岩陰から身を躍らせた。
「身近にいて、僕の目をごまかせると思うのかい?」
 ナギは、唇を舐めた。
「思っておりません。思っておりませんわやー」
「ここ二、三日、僕の周りをうろついているようだけれど、周りをうろついたところで、何の得にもならないよ。目障りだから、僕に近寄らないでくれないかな?」
「いやいや、わてはただ散歩しているだけです。そんなこといわんでくださいよ」
 惟三は卑屈に顔を歪ませた。
 N島での激戦の後、極異界の帰って来ていた惟三は、ナギの動向を窺っていた。隙あらば、ナギの手から十種神宝を奪おうと思っていたのであった。
「コレゾウ、ナンカ、ヨウカ?」
 刻が言った。
「なんも、ようなぞありませんがや」
 惟三は、頭を掻いた。
「ナンモ、ヨウガナイノニ、ナギノシュウヘンヲ、ウロツイテイル。オカシクナイカ」
 刻が惟三を睨みつける。
「散歩。ただの散歩ですわいな。さっきも言いまっしゃろ。たまには花が咲いているところで、のんびりしたいでしょうが。花なんか咲いてるところなんか、そうそうあらへんし……」
 惟三は、刻から目を逸らした。
「おまえが、花を愛でるか? おまえの目当てはこれだろう」
 ナギは、デニムジャケットの内ポケットから紫色の巾着袋を取り出した。
「この中には、十種神宝のうち、三つの神宝……。死反玉、奥津鏡、道反玉がある」
「およよ、ナギはん、十種神宝を持っていましたのかいな。わて、全然知らんかったや」
「嘘をつけ。あの場にいたおまえが、知らぬわけなかろう」
 ナギは、巾着袋を振って見せた。
「ナギはん、一生のお願いですわ。その神宝に触らせて。どんなものなのか、手にとってみたいわ」
 惟三は、両手を合わせて頼み込んだ。
「僕が、おまえにこれを渡すと思うのかい? もっともお前の手に渡ったところで、おまえにはこれを使いこなせないよ」
 ナギは、不敵に笑った。
「使いこなせない? それ、どういうことですかいな?」
「これを使いこなすには、それなりの能力がなけりゃあな。大した能力もないおまえに、これが使えるとは思えない」
「ナギはん、わてをバカにするんですか。これでもわては……」
「能力が高いとでもいいたいのかい? 姉さんが現れた途端、しっぽを巻いて逃げたくせに」
「わては、逃げたんじゃあありませんで。言うならば、一時的退却や。一時的退却。機を見て、戦場に復帰するつもりだったんだ」
「それじゃあ、なぜ、僕と姉さんが、研究所の屋上で戦っていた時、階段の陰に隠れて出てこなかったんだい」
「わてが、階段の陰に隠れていたこともご存じで……。参ったなあ、もう~ ほんと、ナギはんには隠し事ができまへんがな」
 惟三は、舌を鳴らした。
 あの激戦の最中、野村隊長率いる精鋭部隊が屋上にたどり着いたのを見て、惟三は、屋上に続く踊り場で、戦いの様子を窺っていた。
 那美とナギは死力を尽くして戦っている。どちらが勝っても、残されたものの体力は限界になっているだろう。あやよくば同士討ちになってくれればいい。後は、わてが十種神宝を回収するだけだ……。
 惟三は密かにそう思っていたのだが、ナギは戦闘を打ち切り、伽羅と一緒に極異に帰ってしまった。 
 那美と戦って、うち果てればよかったものを……。
「惟三……。ナギは万能ではない。わしがここに来ているのに気づかないでいる」
 声がした。洪暫の声だ。しわがれた声が、ナギと刻、惟三の鼓膜に響くように聞こえた。
「お頭(かしら)……。来ていたのか? どこにいる」
 ナギが言った。
「わしは、ここだよ。ここ」
 川面に、水柱が立った。地上十数メートルに立ち上った水柱が二つに割れ、人影が見えた。人影は一つではなかった。三つの人影が、川面に立っていた。
「お頭(かしら)……」
 ナギは、洪暫と二人の少女の姿をそこに見た。
「ナギ、おまえが那美から奪った三つの十種神宝は、死反玉、奥津鏡、道反玉に相違ないな」
 洪暫が、ナギの目を真っすぐ見つめる。
「ああっ」
 ナギは面倒くさそうに言った。
「湖耶姫(こやひ)、爬耶姫(はやひ)、ナギから三つの十種神宝をとってまいれ」
 洪暫は、両脇の二人の蛇頭人身の蒜壺に命じた。湖耶姫と爬耶姫は水面の上を歩き、ナギの元に行った。
「ナギさま、あたいたちにそれを渡してくださいませ」
 湖耶姫が言った。
「その声、どこかで聞いたことがあるな」
 ナギが問う。
「ナギよ。その娘たちは亡くなった琥耶姫の妹たちだ」
 洪暫が言う。
「妹!? 琥耶姫に妹がいたのか」
 ナギは湖耶姫と爬耶姫をしげしげと見つめた。
 琥耶姫は、トカゲの顔を持つ蒜壺だった。人の容姿に憧れ、化瑠魂という人の容姿に化身できる薬を、自ら生成した女性の蒜壺だった。那美と戦い、琥耶姫は、那美の腕の中で、美しい人の姿で死んでいった。
「その三つの十種神宝は、言わば姉さんの形見。ナギさま、早くそれをこちらに」
 爬耶姫が言う。
「渡すのを断ったら?」
 ナギが言った。
「断るというのか」
 洪暫が、ナギを睨みつけた。


                    = 第二部 第八回に続く = 




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