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自作小説

愚痴る!?  11

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    愚痴る!? 警備員宗一郎 殺人事件に巻き込まれる


                       11、

 一週間後、人見知りをしないというか、なれなれしいというか、度胸があるというか……。大手警備会社K支店に入社した流 幾代、幸子の姉妹は、独身で独りで家の中にいる男、宗一郎の家にいた。
 日曜日の午後のことである。日曜日は、特に仕事が入らない限り、大手警備会社は休みだ。日曜日の午後に、宗一郎の家にわざわざ遊びに来た流姉妹の本意は、どこにあるのだろうかと勘ぐりたくなるが、当の二人はあっけらかんとしているから、勘ぐったって仕方がない。ただ、単に気まぐれに遊びに来たようだから、深くかんがえないほうがいいだろう。
「十全さんの、お家って大きいですね。ここに独りで住んでいるなんて、もったいない」
 雑然と、散らかっている居間で、姉の幾代が言った。
「アパートに住んでいると思ったけど? 意外、意外」
 妹の幸子が言葉を継ぐ。
「オレが建てた家じゃあない。両親が建てた家さ。それも、四十年前」
 宗一郎が言う。
「へえ~ この家、四十年も経っているんだ。そう見えないわよ。目立った傷みなんかないし……ちょっと、散らかっているのが玉に瑕だけど……」
 幾代が、わざとらしく、絨毯の上に置かれていた数冊の雑誌を指さして言った。住んでいる人が、だらしがないとばかりに皮肉を言っているようだが、宗一郎は気にもしなかった。
 気にしている暇なんかない。今、ここに若い独身の女の子が二人もいるのだ。宗一郎は、五十を過ぎていて、若くはないが、男である。牡の本能として、なんというか、抑えきれない、なんともいえない衝動を抑えきれずにいたのだ。お尻がもぞもぞして、痒いし、姉妹の目をまともに見れないでいる。目でも合わせたりしたら、くしゃみが止まらなくなるかもしれない。
 思えば、ここ五年ばかり、若い女の子と親しく話したことがなかった。そりゃあ~ 知り合いの女の子と、道や街で会えば、挨拶ぐらいがするが、それだけ……。たまに、立ち話をすることもあるが、天気のことや、道ばたに咲いている花のことを、二言三言、話しただけで、適当に相づちをうって、別れてしまう。もっと突っ込んだ発展のある話をすればいいのだが、それができない。まったく、だらしがない。で、そんな毎日を繰り返しているばかりいると、オレは女に縁がないのだと、普通に思ってしまうから困ったモノである。女に縁がないと、思い続けていると、潮が引くように、女性たちが、宗一郎の前からいなくなってしまうから、考えを改めなければならないが、これがどうして、なかなか考えが改められない。以前から気にかけていた女性まで、宗一郎の前からいなくなってしまった時には、宗一郎は、ショックで、しばらく眠れなかった。
 が、今日というこの日は、大分、風向きが変わったらしい。
 幾代と幸子の姉妹は、ただ若いだけではない。とにかく可愛いのだ。
 幾代は日本人形みたいな容姿で、男心を惑わすし、ショートボブの幸子は、少女のようなあどけなさで、守ってやりたいと、オレが守らなければ、誰が守るんだという気持ちになる。
 その魅力的な美女が二人、目の前にいるのだ。宗一郎じゃあなくても、男なら、誰でも舞い上がってしまうだろう。
「こんなこと聞いてもいいかどうか、分からないけど……。幾ちゃんたちは、どうして警備会社……それも、主に道路警備ばかりする大手警備会社に入社したの?」
 幾代のことを、幾ちゃんと言うには、ちょっと抵抗があるが、当人がそう呼んでくれと言うのだから、宗一郎は幾代のことを幾ちゃんと呼んでいた。
「明美さんに誘われたのよ。欠員が出て、人が足りなくなると思うから、やってみないかって」
 幾代が言った。
「明美さん? 明美さんとは、知り合い?」
 宗一郎が聞く。
「近所のオバさん。でもね、私……警備員なんて興味がなかったし、不審者を捕まえる力もないしね……どうしようかと迷ったけれども」
 幾代に代って、幸子が応えた。
「幸子ったら~ 警備員イコール、施設警備と思っていたのよ。世の中のことを知らないというか、視野が狭いというか……。道路での交通誘導も、ちゃんとした警備の仕事よ」
 と、幾代が言う。
「悪かったわね、世の中知らずで……」
 幸子は、頬を膨らませた。
「明美さんはね……」
 幾代たちの話によると、スーパーで買い物をしているときに、たまたま店内で逢った明美さんに、仕事をしていないなら、うちに来ないかと誘われたらしい。二人は、はじめ乗り気ではなかったが、熱心に勧誘する明美さんに根負けをして、大手警備会社に入る気になった。
「明美さんには、借りがあるのよ」
 幾代が言う。
 母子家庭だった流家は、なにかがあるたびに、いつyも明美さんの世話になったらしい。幾代たちの母が、夜、スナックで働いていた時には、明美さんが、よく流家に来て、姉妹の面倒を見てくれたし、病気になってしまった幾代が入院したときにも、明美さんは、流家をだいぶ助けた。
「それに、洋子さんもね、なにもしないよりはマシでしょう。そんなに難しい仕事じゃあないからというし……」
 と、幸子が言う。
「洋子さんって……日比野さん?」
 宗一郎が聞く。
「そう、その洋子さん。一緒に買い物に来ていたのよ」
 仲のいい二人のことだ。スーパーで買い物するのも一緒だし、そこでもいつものように世間話に花を咲かせていたのだろう。
「あの人も、だいぶ明美さんに助けられたみたい」
 幾代が、幸子に同意を求めるように言う。
「そうそう、洋子さんのご主人、勤めていた会社からリストラされて、現在(いま)無職で、職安通いしているんでしょう」
 と、幸子が言う。
「職安に行った帰り道に、パチンコ屋があって、パチンコに相当、お金をつぎこんでいるみたい。無職なのにお金を、そんなことに使ってバカみたい」
 幸子が言うには、洋子の旦那さんは、リストラされたのが心外だったようで、ヤケになっているらしい。よせばいいのに、なけなしの預金をくずして、ギャンブルに、そうとう、そのお金をつぎ込んでいた。当然、妻の洋子さんと喧嘩になるが、生活態度を改めようとはしない。それどころか、妻である洋子さんに暴力をふるうようになっていた。洋子さんから相談された明美さんは、旦那と別れるように勧めたが、別れる気はない。暴力をふるわれても愛しているから、絶対、別れない。別れるなら死ぬわと、言う。まったくもって、「愛」というのは、面倒くさいというか、不思議なものだというか、貯めていたお金を遣われ、暴力をふるわれても好きだという気持ちは変わらないものなのだろうか。
「明美さんの家って、金持ちなのか?」
 宗一郎が聞く。
「金持ちじゃあないわよ。夫婦共働きで、朝から晩まで、働いて、二人の子供たちを育てているから、大変だわよ」
 と、幾代が応えた。
 明美さんには、高校三年生の男の子と中学三年生の女の子がいる。ともに大学受験と高校受験を控えていて、精神的にも経済的にも余裕がない。その余裕がない台所事情から、洋子さんを助けているのだ。
「明美さんは、明美さんで、借金があるっていう噂もあるって聞いたわよ」
 幸子が言った。
 人が良いのにもほどがある。人を助けて、自分自身が借金を背負ってしまったら、元も子もないだろう。明美さんにも洋子さんにも家族があるのだ。家族を巻き込んで不幸になるなんて、しゃれにもならない。
 チャイムが鳴った。
 宗一郎の家に誰かが来たらしい。宗一郎が玄関に出て、引き戸を開けると、そこに二人の男が立っていた。
「こちら、十全宗一郎さんのお宅ですか?」
 若い方の男が言った。
「そうですが、どちらさまで?」
 宗一郎が応えると、胸のポケットから警察手帳を取り出した。
(警察!? 明美さんが言っていた、あの二人か? 保坂という刑事と互野……)
 宗一郎は、目を大きく見開いた。


                      = 12に続く =

 
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